会話の格率(Maxim of Conversation)Grice, 1975
コミュニケーションにおいて共有されているはずの4つのコミュニケーションルールの1つ
@量の格率:必要なことは全て述べ、必要以上に多くの情報は送るな
A質の格率:真実だけを述べ、確証のない情報や嘘の情報を送るな
B関係の格率:受け手にとって無関係な情報は送るな
C様態の格率:あいまいな表現、分かりにくい表現は避け、簡潔で順序だった述べ方をせよ
―相手がこれらのルールを守りながら情報のやりとりをしているはずだという互いの信頼と推論の上に成り立っている
―ときにはわざとルールを破ることもある(比喩や皮肉など)
引用文献:社会心理学 (New Liberal Arts Selection)比喩(Metaphor)
「関係の格率」に対する了解を前提としている
―理解する努力を相手に強いる代わりに、それを通して対人的に親しくしようとしているサインを送る
―円滑で奥行のあるコミュニケーションを可能にする
引用文献:社会心理学 (New Liberal Arts Selection)アイロニー、皮肉(Irony)
「質の格率」を破ることによって、直接的に言及するよりも強い意味を生じさせる(岡本, 2006)
e.g., 字が下手だと自覚している人に向かって「字が綺麗だね」と言えば、「字が汚い」というより強い意味になる
「量の格率」を破り、冗長な情報を送るという別のタイプのアイロニーもある
e.g.,自分でも得意だと思っていることについて「さすがに、得意なことは上手くできるねえ」と言う
引用文献:社会心理学 (New Liberal Arts Selection)ポライトネス(Politeness)Brown & Levinson, 1978
相手の「対面」(Face)を脅かさない、礼儀正しく丁寧なコミュニケーションを行うというルール
―相手の関係性に応じて、どのような表現が相手の立場にとって脅威にならないかを、つねに考慮した言語選択が行われる
e.g., 「〇〇してくれない?」と気軽な表現を使うこともあれば、「△△をお願いできますか」という表現が用いられることも
―敬語や婉曲表現が発達していると言われる日本語文化圏に限らず、多くの分化に共通した言語傾向
引用文献:社会心理学 (New Liberal Arts Selection)共通の基盤(Common Ground)Fussell & Krauss, 1989
他者に情報を伝達する際には、受け手の知識や心理状態(共通の基盤)を考慮に入れる
―共通の基盤を持たない他者への配慮を示す一連の実験が行われた
1.受け手へのチューニング(Audience Tuning, Audience Design)Clarck, 1996
―意味の曖昧な図形を数多く参加者に示して、それについて記述を求める実験。ある条件では、その記述を読んだ他者が、どの
図形を指すのが分かるようにと教示し、もう一方の条件では、後で自分が読んでどの図形のことか分かるようにと教示。自分への
覚え書き条件では、特徴だけを短い言葉で記していたが、他者への伝達条件では、細部にまで言及した精緻な記述が見られた。
2.ベビー・トーク(Baby Talk)DePaulo & Coleman, 1986
―自分よりも地位の低い人や、知的な面で劣ると考える相手には、幼児を相手にしたような話し方が用いられやすい。短めの表現で、
ゆっくりと、声の調子はやや高く、理解しやすそうな語彙を多めに使って、繰り返しを用いながら話す。無意識の差別意識の維持
に用いられる点が問題。こうした話法は、恋人同士など、親密な関係でも用いられることもある。
引用文献:社会心理学 (New Liberal Arts Selection)
人間を含む動物は言語以外の非言語を用いることでコミュニケーションを行うことができる
―非言語的な手がかりは対人的な印象を大きく左右する
アンバディとローゼンタールの研究(Ambady & Rosenthal, 1992)
―教員たちの授業の様子を撮影し、10秒ずつ3カットの場面を採取したビデオを参加者に見てもらい、能力と性格を評定してもらった。
その評定結果と、教員たちが実際の授業で学期末に受講者から受けた授業評価の内容を比較したところ、両者の間には高い相関
がみられた。
引用文献:社会心理学 (New Liberal Arts Selection)空間的距離(Spatial Distance)
相手とどのくらいの物理的距離にまで近づこうとするかは感情の親密さを示す(パーソナル・スペース)
―個人差、性差、文化差などの群間差がある
―同じ集団内では人々の間に了解された「適切な距離」がある
引用文献:社会心理学 (New Liberal Arts Selection)視線(Gaze)
他人の目を凝視することは、ある時には親しみを表す一方で敵意の表れにもなる
―状況によってその意味は大いに異なる
相手に発言権を譲る機能
―アージャイルらは、会話に置いて聞き手は全体の時間の約75%、話し手は41%の間、相手の目を見つめていると報告
このことから、相手から少し目をそらすことが、発言権を求める合図の1つになっているとされる(Argyle & Ingham, 1972)
引用文献:社会心理学 (New Liberal Arts Selection)顔の表情(Face Expression)
内的な心理状態である感情を伝えるツール
―表情の中には文化を超えて共通の意味を持つものがある
→「幸福感」「驚き」「悲しみ」「怒り」「嫌悪」「恐怖」といった基本感情は通文化的(Ekman, 1972)
―他者の表情から「快―不快」「覚醒―沈静」の2次元で対比が明確な感情の弁別は比較的正確(Russell & Bullock, 1985)
→次元を共有する感情同士である「興奮」と「喜び」といった感情の区別は難しい
引用文献:社会心理学 (New Liberal Arts Selection)ジェスチャー(Gesture)
言語コミュニケーションに付随するものと、言語的コミュニケーションに代わるものとがある
e.g., 前者の例としてうなずき、後者の例としてウインクやあいさつとしての会釈etc…
―似た機能を持つものに、体の向きや傾きなどがあり、親密さや地位関係を示す役割を持つ
引用文献:社会心理学 (New Liberal Arts Selection)近言語、パラ言語(Paralanguage)
言語的な意味内容を伴わない音声情報
e.g.,声の大きさや高さ、抑揚、テンポ、「間」のおき方、咳払い、溜息etc…
―意味や意図を伝える手段。特に感情表現などの道具として重要
引用文献:社会心理学 (New Liberal Arts Selection)