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様々な心理療法
なぜ多様な心理療法があるのか
心理療法の種類
―『心理療法ハンドブック(氏原ほか(編), 2005)』の目次での分類
1. ロジャーズ派
2. 精神分析
3. ユング派
4. 行動療法
5. 家族療法学派
6. 遊戯療法
7. 箱庭療法
8. イメージ療法
9. 認知療法
10. 認知行動療法
11. 催眠療法・自律訓練法
12. アドラー心理学
13. ゲシュタルト療法
14. トランスパーソナル療法
15. 内観療法
16. 森田療法
17. ブリーフセラピー
18. 支持的精神療法
19. 交流分析
20. 臨床動作法
21. 夢分析
22. 芸術療法・表現療法
23. フォーカシング
24. エンカウンター・グループ
25. サイコドラマ(心理劇)
26. サイコエデュケーション(心理教育)
27. ナラティブ・セラピー(物語療法)
28. グループ療法
心理療法の多様性の理由
―人間の多様性、文化、社会、個人の人間的特質の多様性があるため(岡, 2011)
―心理療法とは人間的コミュニケーションによる関係の微調整
―必然的に、人間の文化の微細な様相に関わる
―心理療法は、ばらばらに切り離されたものではなく、そのつながりの様子も複雑であるため(岡, 2011)
精神分析療法とは?
精神分析療法
―創始者フロイト(Freud, S.)とその後継者の精神療法
―狭義の精神分析療法はフロイト理論のみを指すが、広義にはその後の発展技法も含む(“精神分析的心理療法”と区別することも)
―フロイト理論の発展の歴史の中から多くの心理療法理論が誕生してきた
e.g., アドラー理論、ユング理論、サリバン・フロムの新フロイト派の諸理論、自我心理学、クラインの理論、
対象関係論、自己心理学、ラカン理論etc……
―心の疾患の症状には、抑圧された無意識的意味があると主張した
―精神分析療法は無意識にあるものに気づき、それを「洞察(意識化)」する事で行われる
―精神分析の目標は、無意識である様々な願望・欲求の意識化をすること
―精神分析の発展に伴い、自由連想法、抵抗、転換、転移、喪の作業、エディプス・コンプレックス等の基礎概念が明らかにされた
精神分析の3領域
①心理学的解明法; 基本的には自由連想法による無意識的動機の解明
②治療方法; 被分析者の夢、意識化への抵抗、転移、心的葛藤への治療者の解釈による洞察志向的精神療法(精神分析療法)
③①、②から得られた心理―性的発達理論など一連の精神病理学的理論(精神分析理論)
フロイト理論とその後の理論の違い
―フロイトによる原法は、古典精神分析と呼ばれ、現在の対面法による精神分析理論に基礎を置いた精神療法と区別される
―被分析者は寝椅子に横になり週4~5日通って自由連想をすることと禁欲規則を守ることが求められた
―対象は神経症を中心とする個人に限られ、時間的・経済的負担とともに治療も長期間を要した
―対象は神経症の成人患者のみであった
―古典的には、患者には治療への動機づけが高く、病識があり、ある程度の知性の高さと自我の強さがあることが前提であった
―初期のフロイトは、神経症の原因は幼児期での大人の性的誘惑だと主張していたが力動的要因説へと修正した
―エディプス・コンプレックスは個人を理解する中核的概念として最後まで保持された
―本能的な性愛的エネルギー(リビドー)と自我との葛藤こそ神経症の原因と見なされた
精神分析療法の原理(心的装置論)
―心をエス(イド)、自我(エゴ)、超自我(スーパーエゴ)の3領域に分け、その相互作用から心の働きを捉える
―それぞれが分化して働いている(構造論)
エス(Es); 生物学的な本能に基づく即時的で直接的な充足を得ようとする心の働き
―エスが占めている空間は自我や前意識のそれよりはるかに大きい
超自我(Super Ego); 両親を中心とした社会規範が個人に組み込まれたもので自我の監視役
―青年期にはこの超自我が成長して自我理想になるとされている
自我(Ego); エスからの欲求を満たすために現実の環境や超自我との調整を図る働きを持つ
―外界を知覚し自己概念やわたくし意識に関するもの
―自我が葛藤を調整する際に、さまざまな防衛機制が用いられる
―エスからの欲求や超自我が強すぎると、調整困難になり、より高度な心理状態からそれ以前の状態に戻る「退行」が生じる
―頻繁に起こると、それが問題行動や症状として顕現化
精神分析療法のプロセス
―治療者は中立を保ち「平等に漂う注意」を維持して被分析者に自由連想を求める
―被分析者は、記憶や葛藤などを言葉で連想する代わりに行動で示すこともある(行動化)
―被分析者は、特定の問題・症状を解決し、自己理解を深めたいとやってきたが、意識化を妨害する逆説的現象が生じる(抵抗)
e.g., 無意識の葛藤の洞察に役立つ連想の拒否、治療へ反発する様々な言動etc……
―この現象は単なる説得すべき障害物ではない
―エスと超自我、自我を構造論的に捉える考え方に繋がり、精神分析の治療技法と理論への発展に大きな役割を果たしている
―精神分析治療中の抵抗の中で、特に重要なのは転移に結び付いた「転移抵抗」
―転移とは、過去の重要な人物との関係で体験された感情や行動が、現在の対人関係や治療者との関係で再現されること
―転移は、精神分析特有の幼児期への対抗を促進する構造で顕著になる
―幼児期の葛藤が現在の治療者―被分析者関係の中で再燃して転移神経症が生じる
―転移と転移神経症は、人工的な事態・病気であって、あらゆる点で治療者からの働きかけを受けやすい(Freud, 1914)
―治療者は被分析者が転移の中で示す様々な言動が強迫的に繰り返されるのを阻止し、それを連想のための話題とする
―抵抗が解釈され、情緒を伴う記憶が想起されて初めて、抑圧された観念が自我に受け入れられ、心が再組織化される
―この治療的変化をもたらすまで継続される分析作業を「徹底操作」という
防衛機制(Defence Mechanisms)
―自我が現実に適応するため不安感情や依存欲求に対して無意識に働かせる機制
―代表的な物として以下のようなものがある
1. 抑圧(Repression); 弱い自我を守るために大目に見る
―ヒステリー症状は抑圧された性的衝動の変形
2. 否認(Denial); 都合の悪い不愉快な現実を拒絶すること
―抑圧とセットになって働きやすい
3. 摂取(Introjection); 取り入れること。「気に入る」「食ってかかる」「呑んでかかる」など
4. 同一化(Identification); 相手と一体化することだが、対等の関係ではなく常にアンヴィバレンスを有する
―性的同一性の獲得に重要な心的機制
―特殊形に攻撃者との同一化がある
5. 隔離(Isolation); 行動と情動の両者の関係が絶たれ、観念だけが意識にのぼるが、感情は自覚されないこと
6. 知性化(Intellectualization); 知的理解だけで、実感・実生活が伴わないこと
―思春期における性衝動の対処が該当
7. 合理化(Rationalization); 屁理屈・詭弁で正当化するだけで実際は認めていないこと
8. 反動形成(Reaction Formation); 抑圧された衝動と正反対の傾向でさらに補強工作をすること
9. 復元(Undoing); 隔離された情動をさらに打ち消す・やり直すために働く
―強迫神経症に顕著にみられる
10. 置き換え(Replacement); 欲求・対象を他に置き換えること
11. 投射、投影(Projection); 自己の深いな感情・欲求を他人・外的事象のせいにする責任転嫁
12. 退行(Regression); 過去の発達段階・未熟な状態に戻り、そこで満足を得ようとする事
13. 昇華(Sublimation); 本能衝動が性的満足や攻撃以外の目的に振り向けられることで、芸術など社会的に成功した防衛
14. 投影同一化(Projective Identification); 相手と深く結ばれていると感じ、思い込みが錯綜すること
―共感と共通する点もあるが、邪推に近い
心理(精神)―性的発達理論(漸成的発達論)
―精神分析理論の特徴はリビドーの段階的発達と関連して精神が発達していく過程を考察すること
1. 口唇期(Oral Stage); 乳児期の初期で乳を吸う活動を中核として心身が発達する時期(生後1年半ぐらいまで)
―この時、母親との「基本的な信頼感」が健康な自我の基礎となる
―健全な自己愛は依存欲求の満足と克服を契機として生じる
2. 肛門期(Anal Stage); 肛門・尿道括約筋の神経支配が完成し大小便のしつけが始まる時期(生後8ヶ月~3,4歳)
―貯留・排泄の生理的快感を手放し社会慣習に従う行動をしつけられる
―成功すれば自律・誇りが生まれ、失敗すれば反抗・疑惑が芽生える
―罪悪感の発生と関連があるとされる
3. 男根期(Phallic Stage); 性の区別に目覚める時期(3、4~6、7歳ごろ)
―同性の親への敵意と異性の親への性的愛着を持つ(エディプス・コンプレックス)
―この時期に特有な男女の心性
―去勢不安; エディプス願望を抑えられる恐怖心 = 男子における主導権喪失の恐怖
―男根願望; 女子における主導権への羨望
4. 潜伏期(Latency Period); エディプス・コンプレックスが抑圧され、同性の親へ同一化が進む(5~12歳ごろ)
―性的成熟が到来するまで性的発達が足踏みする時期
5. 性器期(Genital Stage); 自らの人格の独立性を形成する時期 = 自我同一性(Ego Identity)(思春期・青年期以降)
―自我同一性は青年期に達成すべき中心的課題
―過去、現在、将来の自分が、社会及び自分自身が認め期待するものすべてを統合し一貫する自分を作り上げる
引用文献:
心理学検定 基本キーワード
、
臨床心理学キーワード (有斐閣双書―KEYWORD SERIES)
、
臨床心理学とは何だろうか―基本を学び、考える
Keyword:
精神分析療法、自由連想法、無意識、洞察、エディプス・コンプレックス、リビドー、エス、自我、超自我、退行、転移、転移抵抗、徹底操作、防衛機制、漸成的発達論、口唇期、肛門期、男根期、潜伏期、性器期
来談者中心療法とは?
―ロジャーズ(Rogers, C.R)によって創始され、深化・発展してきたカウンセリング理論
―非指示的カウンセリング⇒ 来談者中心療法⇒ パーソンセンタード・アプローチと名称が変化してきた
―名称の変化にも関わらず以下のような3つの基本仮説が保持され続けている(Rogers, 1986)
1. 個人には本来、自己実現への力が内在しており(ロジャーズの大前提)
2. その個人が、ある促進的な心理的風土に晒されるとき(人格変容の必要十分の研究)
3. その個人には建設的な人格変容が起こる(十分に機能する人間の研究)
自己理論
―ロジャーズの理論は自己理論と呼ばれる
―人間を有機体として捉え、この有機体は先天的傾向として「実現傾向」を持つと仮定した
―客観的にどのようであるかよりも、どのように受け取っているかということが本質とする
―自己をどのように認識しているかという「自己概念」が重要
―「体験」されている自己の有り様とズレれば不適応になり、一致度が高くなれば「自己一致」した適応的状態
来談者中心療法の特質
―人間は人格変容を目的とすることで、ともすると強迫的・威嚇的態度で接する事さえある
―建設的な人格変容を可能にする心理的風土は作り出せない
―個人の自由な自己探索が制限され、特定の経験に目を閉じたまま外界に対処することになるため
―ロジャーズは、自由で驚異の無い、安全な心理的風土こそ建設的人格変容にとって不可欠の条件として重視した
―この条件を満たすカウンセラーの態度として、3つの態度条件を設定した(Rogers, 1957)
1. 無条件の肯定的配慮(Unconditional Positive Regard)
2. 自己一致あるいは純粋性(Congruence or Genuineness)
3. 共感的理解(Empathic Understandng)
―3つの態度条件のほかに「プレゼンス(Presence)」という概念も提唱している(Rogers, 1986)
―詳細は「
カウンセリングの基本的態度と技法
」の項を参照
傾聴
―クライアントの体験している世界に耳を傾ける行為
―カウンセラーの傾聴に触発され、クライエントが自分自身の心に耳を傾けるようになり、自分自身への接し方が変化する
―自分自身への接し方の変化が、クライエントのパーソナリティ変容に繋がる
引用文献:
心理学検定 基本キーワード
Keyword:
来談者中心療法、自己理論、自己概念、体験、自己一致、無条件の肯定的配慮、共感的理解、プレゼンス、傾聴
認知行動療法とは?
―人間の認知、行動、情動、生理に関わる問題を治療対象とするアプローチの総称
―各側面は相互に影響を与え合うという前提のもと、多面的に働きかけを行い、変容を起こし、治療効果を引き出す
―学習理論や行動理論などにおける心理学の成果を応用したエビデンスベースドの心理療法
―認知療法、論理療法のほか、SST、自己教示訓練、ストレス免疫訓練など治療効果が実証されている治療パッケージを含む
認知行動療法の目的と適用
―クライエントとの関係は共同的であり、クライエントのセルフコントロールを最終目標とする
―代表的なアプローチは認知療法と行動療法であり、いずれも認知の変容を治療の標的としている
―その発展につれて、抑うつ症状や心理的ストレス反応、心理的不適応などに限られてきた治療対象も拡大し続けている
問題の構造化
―認知行動療法はクライエントの抱える問題を以下のように構造化し理解する
1. 人間関係や生活環境の中にある様々な手がかりに問題がある場合(環境の問題)
2. 振る舞いや態度、行動に問題が見られる場合(行動の問題)
3. 考え方、考え方のスタイルに問題が見られる場合(認知の問題)
4. 感情、情緒面での問題(情緒の問題)
5. 身体的症状に問題のみられる場合(身体の問題)
6. 興味、関心、動機づけに問題のみられる場合(動機づけの問題)
―整理された訴えを治療の標的として明確化する
―引き続いて、治療標的のどこから問題解決にあたるかが検討される
―問題解決しやすいところから変えていこうとする
認知行動療法の適用
―認知行動療法は、以下のような場面、症状に対して大きな治療効果が認められている
―気分障害、抑うつ、全般性不安障害、恐怖性の障害、強迫性障害、急性のストレス障害、外傷後ストレス障害、摂食障害、
疼痛、アルコール乱用、学生相談、糖尿病などの生活習慣病といった慢性疾患患者の健康行動の形成
認知療法
―ベックによって開発された
―クライエントの考え方のスタイル(認知)を治療の標的とし、その変容を通して、情緒、行動面の問題の解決を図る治療法
―認知行動療法と総称されるの一群の治療アプローチの代表的なもの
ベックの認知療法(Beck, A.T.)のプロセス
―クライエントの否定的で悲観的な、認知の歪みを修正して、現実的で適応的な認知に変容させる療法
―認知の歪みは、「自動思考」と「スキーマ」という2つのレベルに現れる
自動思考
―ある特定の場面において瞬間的に頭の中に浮かんでくる考えやイメージ
―注意を向ければ容易に意識化が可能
スキーマ
―自動思考の背景にある価値観や人生観のようなもので、人間の考え方に特定の枠組みを与えるもの
認知療法のプロセス
1. 問題を明確化した上で、自動思考に注意を向け、同定、検討する
2. 自動思考の中に一定のパターンを見出すことによってスキーマを同定、検討する
―認知をより現実で適応的なものに修正していくことで、クライエントの状態を適応的に変化させていく
―10~20回ぐらいの短期的な治療になることが多い
認知療法の適用
―うつ病とパニック障害を最も得意とする
―摂食障害やパーソナリティ障害などにも適用される
論理療法(Ellis, A.)
―人間の反応は刺激によってではなく、刺激をどう受け止めたかという認知によって生じるという考え方に立脚
―人間の認知を変化させれば反応が変化するという考え方は、ベックの認知療法と共通
―合理情動療法とも訳される
論理療法の特徴
―基礎理論であるABC理論に集約される
1. 人間に悩み(結果(C))をもたらすのは、出来事(A)ではなく、出来事をどう受け止めるかという非合理な信念(B)
―非合理な信念(Irrational Belief)とは、非合理的で非現実的な、クライエントを不幸にする考え方
2. 非合理な信念を、合理的な信念(Rattional Belief)に変えることで、クライアントの悩み(C)を解決できる
―信念の変更に抵抗がある場合は、論争などの方法を行い、実際の場面で合理的信念を適用する宿題を行わせる
心理的ストレス理論(Lazarus, R. S. et al.)
―環境と人間が相互に影響を及ぼしあい、そのプロセスが活性化している状態こそがストレス
―ストレスはストレッサ―によって一方向的に引き起こされるのではない
認知的評価とコーピング
―ストレス反応は、ストレッサ―の強弱ではなく、認知的評価とコーピングによって決定される
1. なんらかのストレッサ―を経験した場合に、その経験の強弱よりも、それをどのように捉えるか(認知的評価)
―一時的評価と二次的評価がある
―一時的評価とは、出来事が自分にとって有害かどうかを判断するストレッサ―自体に対する評価
―二次的評価とは、ストレッサ―に対してどのような対処が可能かというコーピングに対する評価
2. ストレス反応を低減させるための対処(コーピング)
―問題焦点型と情動要点型のコーピングがある
―ストレス反応をもたらすストレッサ―に対して行われるもの(問題焦点型)
―ストレス反応に対して行われるもの(情動焦点型)
ストレスマネジメント
―ストレス反応を低減させたり、過度のストレス反応を表出させないようにすることを目的とした働きかけ
―ストレスマネジメントの重要な構成要素
1. 刺激となる環境への介入(ストレッサ―の軽減、除去)
2. 個人の認知への介入(刺激の捉え方、考え方の変容)
3. 個人のコーピングへの介入(対処レパートリーの拡充、SST)
4. 個人のストレス反応への介入(リラクセーション法を用い、心身のストレス反応を自分自身で緩和)
各行動療法の理論とプロセス
―実験的に明らかにされている学習理論、行動理論に基づいて人間の問題行動を変容させる方法
―人間の問題行動は、適切な行動の学習が不足している結果、あるいは不適切な行動を学習した結果であるとする
―適切な行動の学習を行うか、学習された不適切な行動を除去するという形で行動の変容を目指す
―他の心理療法と比較して、客観性と普遍性を強く志向している
行動療法の特徴
1. 行動理論を基礎原理とする
2.治療の目標を明確にし、客観的測定や制御が可能な行動のみを治療対象とする
3. 症状を不適応行動の学習あるいは適応行動飲み学習としてとらえる
4. 治療の焦点を過去ではなく今現在にあてる
5. 治療の最終目標を行動のセルフコントロールとする
6. 他の心理療法と比較して治療に要する時間が短く、経過を客観的に理解できる
学習の3タイプ
1. レスポンデント条件づけによる変容
―リラクセーション法を学習させることによって、不安や恐怖などの不適切な反応を抑制する(逆抑止)
―逆抑止の原理を応用して、ウォルピ(Wolpe, 1958)が開発したのが系統的脱感作法
―系統的脱感作法とは、不安や恐怖を引き起こす条件刺激に対する過剰な感受性を系統的に弱めていき、
最終的に条件刺激に対する反応が怒らないようにする方法
―早期に不安を軽減することが可能なエクスポージャー(暴露法)が用いられるケースも増えている
―不安や恐怖を引き起こす刺激に患者をさらすことによって、刺激に対する不適応的な反応を消去する治療
―実際の刺激を用いる方法と、イメージを用いる方法がある
―不安や恐怖が引き起こされなくなるまで、刺激を与え続けることが必要
2. オペラント条件づけによる変容
―オペラント条件づけを応用した技法として、トークンエコノミー、シェイピングなどがある
トークンエコノミー
―一定の課題を正しく遂行できた時、約束した条件に従ってトークンを報酬として与え、行動を強化する方法
※トークンとは、シールやカードなど、一定量に達すればなんらかの報酬と交換できる代用貨幣
―治療場面では一般にシェイピングとの併用が効果的とされる
シェイピングは、一定の目標行動に至るまでのプロセスを段階的に設定し、順次これを遂行させていく方法
―スモールステップの原理とも呼ばれる
3. 社会的学習による変容
―問題行動の変容にあたって、認知的活動を重視するもので、モデリング(観察学習)と呼ばれる
―バンデューラは、特に対人関係の場面で、他者の行動の観察が新しい行動の習得に繋がることを発見した
―モデリングは、自分自身がいなくとも問題場面にいなくとも、そこにいる他者の行動を観察することで成立する
―臨床場面において、問題行動の変容や治療に利用する場合は、モデリング法(モデリング療法)と呼ぶ
ソーシャル・スキル・トレーニング(Social Skill Training: SST)
―対人関係を構築し、それを維持するために必要な行動を習得するためのトレーニング
―対人行動上に問題がある場合、その原因を社会的スキルの欠如として考える
―必要な社会的スキルを学習しながら、不適切な行動を修正し、対人行動上の問題を改善しようとする治療技法
SSTのプロセス
1. 教示; 学習すべきスキルを特定した上で、スキルの概念やSSTの意義を説明
2. モデリング; 望ましいモデルの提示
3. 行動リハーサル; スキルを練習
4. フィードバック; 適切な行動を強化、修正
5. 日常生活場面への般化; 習得したスキルが現実場面で実践できるかどうか確認
SSTの適用
―引っ込み思案の子ども、攻撃的な子ども、孤立した子供に対するSST
―統合失調症の経過と転帰への採用によって、再発予防へとつなげる
―統合失調症寛解患者の家族による負の情動表出が高いと再発率が高いため、家族の患者の関わり方をSSTによって修正することも
引用文献:
、
臨床心理学キーワード (有斐閣双書―KEYWORD SERIES)
、
心理学検定 基本キーワード
Keyword:
認知行動療法、認知療法、論理療法、心理的ストレス理論、ストレスマネジメント、系統的脱感作法、トークンエコノミー、シェイピング、モデリング、ソーシャル・スキル・トレーニング
その他の心理療法
交流分析(E. Berne)
―アメリカの精神科医E.バーンが開発した人間行動に関する理論体系とそれに基づく治療法
―互いに反応しあっている人々の間で行われている交流を分析することを目的とする
―心の構造や機能を記号や図式を使って分かりやすく説明するところに特徴がある
―理論上は精神分析から出発している面も多いが、無意識の存在を仮定せず、「今、ここで」を重視する
―自己分析と集団療法を原則とし、人間性心理学の中に位置づけられる
―技法面からは精神分析よりも認知行動療法と共通するものが多い
4つの分析
―交流分析で行われる4つの分析
1. 構造分析
―パーソナリティを親(P)、大人(A)、子ども(C)の3つの自我状態があると想定
―状況により、各個人により優位となる自我状態が異なると考え分析
2. 交流パターン分析
―2人の間のコミュニケーションの様子をP、A、C間のベクトルで分析
3. ゲーム分析
―悪循環に陥った対人関係のパターンを分析
4. 脚本分析
―人が強迫的に従ってしまう人生の「脚本」の分析
―この内容を知り、それを「今、ここで」書き換える決断をし、新しい人生を歩みだすことが交流分析の最終目的
交流分析の適用
―心身症、神経症、うつ病など対人関係ストレスがその発祥や経過に関与する病態に対して広く用いられる
―単独よりも薬物療法や他の個人療法と併用されることが多い
―エゴグラムによる自己理解は、職場のメンタルヘルスなど、健常者の健康教育にも広く適用される
集団精神療法・サイコドラマ
―広義には、文字通り集団を対象にした精神療法
―狭義には、集団の相互作用を通して成員の人格、問題行動、対人関係の改善等を図るために意図的に組織された集団の心理療法
―相互作用は主に言語によってなされる
―小集団による治療のメカニズム、技法、プロセスなどが仮定され、それに基づいた治療目的や方針が立てられる
―精神分析的な立場に立ったものを指すことが多いが、そのほかにも多くの立場がある
―代表的な技法として心理劇がある
心理劇・サイコドラマ(J.Moreno)
―即興劇を主体とした集団心理療法の1つ
―「自発性」と「役割演技」の2つの原理が重視される
―筋書きで決まった役割を取るのではなく、「今ここで」生じたテーマの状況に基づく役割が演じられる
―治療の場に必要な要素は主治療者である監督、治療の媒介となる補助自我、被治療者である演者、演者ともなる観客、舞台
心理劇の手順
1. 簡単なウォーミングアップ
2. 実際のドラマの段階
―主題や主役の決定後、場面構成を行って演技に入る
―主役の分身をおく「ダブル」や相手の立場から自分を見る「役割交換」、補助自我や他者が演じる自分を見る「ミラー」など
3. シェアリング
―主役の体験を分かち合い、それぞれの体験を話し合う段階
ストレス免疫訓練(Stress Inoculation Training)Meichenbaum, 1977
―生物学における免疫の概念を取り入れたストレス・モデルをベースとした治療法
―事前に軽めのストレッサ―にさらされ、上手く乗り切る経験をしたならば、幾分強めのストレッサ―に出くわしても対処できると想定
訓練の3つの段階
1. 教育的段階
―治療者とクライエントがストレス問題について共通理解を得ることを目的とする
―ストレス反応の発生する過程が平易な言葉で説明される
2. リハーサル段階
―具体的なストレス対処スキルを獲得する
―ストレッサ―に関する知識を増やして思い込みや諦めを少なくする
―ストレッサ―に関する逃げ道を準備してストレッサ―に直面する恐怖心を低減
―身体的リラクセーションによって生理的覚醒を低下させる
―認知的対処スキルとしては、「ストレッサ―に備えているとき」などに用いる自己陳述を用意し、リハーサルを行う
3. 学習された対処スキルの実行段階
―ストレッサ―に晒された状況で、対処スキルを使用し、自分にとって効果あるストレス対処方法をクライエント自身が明らかにする
問題解決療法(Problem Solving Therapy)D'Zurilla & Nezu, 1982
―日常生活の中での問題解決能力を高め、自己効力感を強化することで心の問題の解決を図る治療法
―人が自分の問題をどのように理解するかによって不安や抑うつ気分が生じると想定
―特に、問題そのものの捉え方、原因帰属の仕方、脅威性や対処可能性に対する評価、統制感といった個人の認知が影響
問題解決の方法を学ぶ治療法
―ズリラとネズによって体系化された治療法で、以下の5つの段階を経て、治療を目指す
1. 何が問題となっているかを明らかにする段階(Problem Orientation)
2. 問題を評価する段階(Problem Definition and Formulation)
3. 多様な問題解決方法の検討(Generation of Alternatives)
4. 実現可能な解決方法を探索する段階(Decision Making)
5. 問題解決方法を実行し効果を確認する段階(Solution Implementation and Vertification)
―5つの段階を経ることで、クライエントが自分自身で問題解決できるという自己効力感が増大、セルフコントロールできるようにする
問題解決療法の適用
―単極性のうつ病、広場恐怖を伴うパニック障害、外傷後ストレス障害、パーソナリティ障害、肥満治療、慢性疼痛、
性機能不全、夫婦間葛藤、臨床的なストレス管理などの問題に適用される
対人関係療法(Interpersonal Therapy:IPT)Klerman, Weissman
―非双曲型・非精神病性のうつ病に対する精神療法
―うつ病の発症や経過、回復に対して生物学的な脆弱性に加え患者が抱える対人関係上の問題が影響を与えるという仮説を持つ
―実際の治療で幼児期の体験や防衛機制や葛藤などを取り上げることはしない
―患者が現在抱える具体的な問題が重視される
―理論的には精神分析の対人関係学派の流れを引いている
―治療の目的は具体的で、技法は行動療法の影響を受けている
効果
―対人関係療法が一部の大うつ病性障害の治療に効果的であることが示されている
進め方
―治療はパッケージ化されたマニュアルを用い、通常、薬物療法と併用する
―一回45分程度の面接を12~16週間行う
1. 最初の3セッション
―診断と対人関係の問題、特にうつ病エピソードの発症時期に起こった対人関係の変化を明らかにする
2. 中間期
―最初のセッションで明らかになった対人関係上の問題に合わせ、新しい対人役割、対人技術の改善、現実を検討する認知を変える
3. 最後の数回のセッション
―治療によって得たものを確かなものにする、将来うつエピソードが再発した場合の対処法などが目標
自律訓練法(Autogenic Training: AT)Schultz, 1932
―心身のリラックスから心身の健康を目指す治療法
―「気持ちが落ち着いている」という暗示文を頭の中で無心に繰り返すことによって、心身の弛緩状態を作り出す方法
―目的は心身の機能の再調整をし、心の「再体制化」を測ること
―中枢神経系の過剰興奮を沈静し、脳幹部の機能を調整して、心身の機能をホメオスタシス状態に導く心理生理的治療法
標準練習(Standard Exercise)
―ATの基本は標準練習にあり、1つの背景公式(全般的安静感)と6つの公式(生理的安定)からなる
―標準練習の各公式
1.四肢重感練習
2. 四肢温感練習
3. 心臓調整練習
4. 呼吸調整練習
5. 腹部温感練習
6. 額部涼感練習
―標準練習は、イスなどに腰掛けた姿勢でリラックスし、公式を順に唱えながら身体機能の調整を行っていく
―身体部位を唱え、積極的に注意を向けて変化を起こすのではなく、身体部位の変化に気づくという受け身的態度が重要
自律訓練法の心理学的効果
―短期的効果
1. 緊張や不安の減少
2. 怒りや抑うつ感の現象
3. 活気や爽快感の増加
―長期的効果
1. 心身の変化への気づきの増大
2. 対人関係の安定
3. ストレス耐性の増大
4. 自律神経機能の安定
練習が適さない人
―適用が禁忌な人々
―心筋梗塞や統合失調症の陽性患者、低血糖発作の可能性のある人、糖尿病患者で身体症状の監視が困難な人
―適用に注意が必要な人々
―緑内障患者や甲状腺機能亢進症患者、強い抑うつ状態を示す人
―練習中に血圧が上昇する場合や、ATを行った後に不安が増大するような人にあっても、指導は慎重に行う必要がある
バイオフィードバックとリラクセーション
―生体の自動制御機能が破たんした時に、それをピンポイントに治す治療法と、全身の機能調節を介して治す治療法
―自己の生体現象を、認知の容易な外部情報に変換してフィードバックし、それをもとに生体現象を自己制御しようとする手法
理論的背景
―過大なストレスによって引き起こされた心身症では、生得的な自己制御メカニズムが破たんをきたし、様々な症状を呈する
―本来閉鎖ループである自動制御システムの一部を開放し、手動的にコントロールしてやる方法が有効になる
―バイオフィードバックの2通りの方法
1. ある生体反応を直接意図する方向に変化させようとする直接法
2. 筋電図の低下や皮膚温の上昇を通して、全身のリラクセーションを得ようとする間接法
リラクセーションとは
―もともとは、不安や緊張と拮抗する筋肉の弛緩を意味していた
―現在では、ストレスとは対極にある心身の状態であり、以下の状態を指す
1. 全身性の交換神経活動の低下
2. 副交感神経活動の亢進
3. ストレスホルモンの低下
4. 免疫機能の増強
―心身症に認められる慢性のストレス・過緊張状態の治療に非常に有効
―具体的な方法
1. 漸進的筋弛緩法
2. 間接法によるバイオフィードバック
3. 自律訓練法
4. ヨーガ
―バイオフィードバックは生体の自動制御破たんのピンポイント的な治療法
―リラクセーションは全身性の調節を狙った治療法
ブリーフサイコセラピー
―広義には、治療期間が短期でありながら、より効果的で効率的な治療を目指す心理療法
―患者の中心的葛藤に焦点を合わせ、自律性を尊重し、社会適応をねらう簡易心理療法
―狭義には正統的な精神分析療法を踏まえて、その批判と新たな展開として生じてきたもの
―人格の再構成ではなく、①現在の症状や不適応状態の消失・改善、②将来の情緒的な問題の予防に焦点をあてた心理療法
ブリーフセラピーの理論
―現在の治療モデルは「戦略的治療モデル」、「MRI(Mental Research Institute)モデル」、「解決志向モデル」を背景とする
―戦略的治療モデルは問題の根底に一定の構造を仮定し、構造の変化に働きかけようとするもの
―MRIは相互作用の連鎖や個人の認知の変容を重視
―解決志向モデルは治療者とクライエントがコミュニケーションを通じて、互いの主観が構成する現実を新たな現実に作り変える
―以下のような方法論を持つ
―危機介入法、ブリーフサイコセラピー、緊急ブリーフサイコセラピー、短期心理療法、焦点中心療法、時間制限心理療法
―8回程度の面接で7割程度の問題の改善が見られるとされる
ブリーフサイコセラピーの技法
―治療者は会話をリードし、クライエントが問題を解決していけるように導くため、以下のような技法を用いる
―「例外を見つける質問」、「ミラクル・クエスチョン」などの質問技法
―問題解決に焦点をあてた介入技法(コンプリメントと、予想の課題etc……)
家族療法・夫婦療法・システムズアプローチ
―夫婦・家族をシステムと捉えて対応する治療法
―システムとは「互いに関係を持ち合い、また環境とも関係を持って存在する一組の要素」と定義される
―「一般システム理論」や「一般生物体システム理論」などを現実の問題に応用する場合をシステムズアプローチと呼ぶ
システムズアプローチを理解するために必要な概念
開放システム
―環境との間で物質・エネルギーと情報を常にやりとりしているシステムのことであり、生物体システムは全てこれに含まれる
円環的因果律
―システムの要素が互いに関係を持ち合っていることを因果の観点から表現した概念
e.g., 家族の一成員の行動が他の成員の行動の結果であると同時に原因にもなっていくという関係
階層性
―システムにはより単純でミクロな下位システムから、より複雑でマクロな上位システムまで無数の階層がある
―あるレベルに注目した場合、下位のシステムはその要素となり、上位のシステムはその環境を与えるという関係になる
―個人に対する介入において、家族や職場などの上位システム、薬物などの個人の下位システムに介入可能になる
生物体システムと治療構造
―生物体システムは以下の3構造を持ち、どの側面に注目するかで家族療法の主要な学派の違いが生じる
構造: ある時点での静止的なシステムの様態
機能: ある程度の規則性をもって繰り返される出来事のパターン
発達: 時間的経過とともにシステムの要素が全体から分化しまた統合していく過程
―家族療法の治療過程の理解に大きく役立つ「安定状態」と「適応過程」の概念
安定状態
―ミクロに見ると常に変動しながらも全体的にはそれが一定の範囲に収まり恒常性が維持されるシステムの性質
適応過程
―システムが内外の変化に絶えず対応して安定状態を保とうとする過程を意味している
―負のフィードバックにより従来の安定状態を維持しようとするモーフォスタシス
―正のフィードバックにより新たな安定状態を作り出そうとするモーフォジェネシスが含まれる
e.g., 家族成員の精神病などは、例えば子どもの自立など家族システムが大きく変化しなくてはならないときに、
家族が病的に適応過程を働かせている現れと理解される
→家族療法の目指すところは、より代償の少ない適応を家族にもたらすこと
家族療法の適用
―統合失調症、摂食障害、登校拒否などに特に有効
―小児・思春期などの年代の心身症、神経症、うつ病、問題行動などにも有効
―夫婦療法は、特にアルコール依存、うつ病、性機能異常に有効とされるが、夫婦間の不和に基づく様々な問題に有効
催眠療法
―心理療法の中では最も歴史のあるもので、その原点とも言える
―J.A.シャルコーやA.A.リエボーらによって、催眠の効果は暗示によって生じるものであるとの考え方が広まった
―S.フロイトは、最初催眠療法の研究をしていたが、その後自由連想法を編み出し、精神分析へとその考え方を発展させていった
―催眠療法によって、J.H.シュルツによる自立訓練法の開発、E.R.ヒルガードの実験的研究、M.H.エリクソンの催眠療法が発展した
催眠とは何か
―誤解の多いアプローチだが、れっきとした科学的な裏付けのあるもの
―催眠は「言語暗示によって人為的にひき起された意識の変容状態」であると定義される
―睡眠と類似しているが、異質のもの
―催眠中は被暗示性が非常に高く、覚醒時に比べて運動、知覚、思考の異常性が容易に引き起こされる
―意識の変容状態を催眠性トランス状態という
―催眠状態の特徴として、イメージの活性化、心身のリラックス状態、注意集中が受動的でかつ狭くなることなど
―催眠状態への誘導には、通常催眠誘導のために決まった一連の暗示系列があり、それに従うことで催眠深度が深まる
催眠療法の技法
―催眠療法には大別すると2つの方法がある
1. 催眠そのものがもつ治療的要因を最大限に利用しようとするもの
e.g., 暗示によって症状を除去しようとするもの、イメージを利用するもの(メンタル・リハーサル)、持続催眠療法etc…
2. 他の療法の中に催眠を組み込み、その両方の効果を高めようとするもの
森田療法
―森田正馬によって創始された精神療法
―神経症、とくに社会恐怖傾向を示す事例に対する特殊療法
―森田の原法は、以下の4期に分かれる
1. 第一期: 絶対臥褥期
―クライエントを隔離し、生理活動以外には一切の活動を制限し、ほとんど布団に寝ているように促す
2. 第二期: 軽作業期
―臥褥時間は7~8時間にし、外界の事物を眺めたり軽作業をさせたりする
3. 第三期: 重作業期
―睡眠時間以外は絶えず何かを行っている生活をさせ、次第に肉体的な思い作業に写していく。読書、趣味なども自由にさせる
4. 第四期: 退院準備期
―日常生活に復帰させ、生活訓練を行う。
―約一か月前後を1コースとして治療が完了するようにする
―この間、日誌を書かせ、治療者側の経過観察にするとともに、患者の自己洞察を深めるようなコメントを与える
森田神経質
―森田療法は森田神経質と呼ぶ神経症の中の一群を対象としている
―森田神経質は、素質に機会が与えられ、精神交互作用によって悪化していくもの
―「素質」は、自分の情緒反応を生存に否定的であると決めつける傾向であり、「ヒポコンデリー気質」と呼ぶ
―「精神交互作用」とは、自分の情緒的反応に意識を集中させるほど、情緒的反応が強く感じられる悪循環が起きること
「あるがまま」と「生への欲望」
―森田療法では、精神交互作用を打ち切り、その人が本来持っている健康的な力、「生への欲望」を引き出すことを中心課題にする
―不安を「あるがまま」に受け入れて、より良くなりたいという「生の欲望」に従って行動することを体得させる
内観療法
―もともとは吉本伊信により、浄土真宗の「見調べ」をもとにして開発された修養法
―精神療法としての効用が認められ、現在では国際的にも評価を得ている
内観療法の手続
―自分の身近な母、父、夫または妻、子、先生などに対する過去の関わりを以下の3つのテーマに沿って繰り返し思い出す方法
1. 世話になったこと
2. して返したこと
3. 迷惑をかけたこと
―自分や周囲の人々への理解が深まり、温かな気持ちになり、人間への信頼を回復し、自己の責任を自覚し、意欲的な行動ができる
―具体的な方法は「集中内観」と「日常内観」に分かれる
―集中内観
―内観道場に1週間とどまって実施する
―外部からの刺激を遮断した薄暗い狭い静かな屏風に囲まれた空間で行う
―毎日朝6時から夜9時まで継続的に、3つのテーマに関わる具体的事実を、過去から現在まで3~5年刻みで思い出す
―それを1~2時間ごとに訪れる面接者に手短に報告し、面接者は報告内容に共感的に耳を傾け、次のテーマを確認、激励する
内観療法の適用
―一般人の人格の陶治、修養、人生上の悩みの解決
―不登校や非行、摂食障害、親子や夫婦の不和、うつ状態、アルコールや薬物依存、心身症、神経症などに有効
絶食療法(Fasting Therapy)
―絶食により、自律神経機能、内分泌機能、免疫機能などの身体機能の再調整が測られる治療法
―心理療法としての意味合いを持つ
―患者の気づきや内省を増し、認知的再体制化が促進され、能動性と自信の獲得、自己概念の良好化、現実適応力増大が図られる
―自律訓練法、内観法、読書療法などの心理療法と併用される場合が多い
絶食療法の手続
1. 患者が適応症であると判断された場合には、治療に対する動機づけを図り、心身両面での精査が行われる
2. その後、10日間の絶食期と5日間の復食期、そして回復期が設定される
2-1. 絶食期
―絶食期には患者を個室に隔離し、面会、電話、テレビなどの社会的刺激は禁止される
―服薬を中止し、5炭糖補液500~1000mlに各種ビタミン・アミノ酸を添加した点滴を行う
―この時、飲料水以外の飲食物の摂取は禁止
2-2. 復食期
―おもゆ、おかゆ、牛乳などの復食メニューに従った食事が提供される
2-3. 回復期
―社会復帰への訓練、薬物療法の再開、心身両面の精査が行われる
絶食療法の適用
―過敏性腸症候群や過換気症候群などの機能性疾患への適用
―自律神経失調症、筋緊張性頭痛、アレルギー疾患、一部の摂食障害などの適応症等への適用が効果的
―熱性疾患、出血の強い疾患、消化性潰瘍、重症高血圧症、心筋梗塞などの器質性疾患、統合失調症、中程度のうつ病などは禁忌
ゲシュタルト療法
―クライエントの「今、ここで」の体験による、自己の全体性の回復を重視する治療法
―過去の体験が十分に消化されず「未完結な問題」となっているために、自分の全体で自由な体験ができなくなっている場合に用いる
―未完結な問題が「今、ここに」十分に湧き起ってくるようにし、完結させることを目指す
⇒ある特定の「図」が固定してしまっている状態を「地」に戻して、再び自由な図が作れる状態にすることと概念化されている
ゲシュタルト療法の手続
―前提
1. セラピストは分析・解釈はしない
2. クライエントが自分への気づきを深められるように、安全で信頼できる場を提供
―クライエントは、それまで意識から排除してきた部分に「今、ここで」気づくことが出来ると、全体としての自分を感じ取れる
―セラピストの役割
1. クライエントの表に現れた言葉や行動だけでなく、非言語や緊張の現れなどにも注意を向け、フィードバック
2. その意味を尋ねることで、統合の過程を援助
―チェア・テクニックなどが用いられる
ゲシュタルト療法の適用
―心身症、神経症、うつ病など様々な心理的問題に適用される
芸術療法
―非言語的な自己表現によって問題や症状の背後にある心理的原因を発散させる
―言葉によって原因を掘り下げていく過程によって自己洞察を促す、多くのカウンセリング過程とは異なる
―人間が生来もっている、内面に在るものを何らかの形で表現したいという欲求を基礎にした心理療法
―何かを作ったり、絵で表現することによって、内面に蓄積された余剰なエネルギーの解放(昇華)、心的緊張を解きほぐす(カタルシス)
言語化しにくい内面の問題に気づくための手立て
―治療技法としてだけではなく、有効な診断法としての側面を持つ
―言語による対人的接触が苦手な大人に対して、また言語表現の難しい幼児や児童に対して本質的な問題を明確化していく
―通常は意識下に抑圧されている心的現実が表出されることも
⇒芸術を通したコミュニケーションが、言語的な診断や療法以上に有益な方法となることもある
さまざまな芸術療法
―その種類
―絵画療法、箱庭療法、音楽療法、造形療法、コラージュ療法etc……
―実施の形態
―個人―集団、何らかの課題に沿う場合―クライエントの自由な反応を重視する場合
芸術療法の目的
―どのような目的によって芸術療法を用いるかは、治療法の方法論によって異なる
―以下のように共通する要素もある
1. クライエントと治療者の感情交流を促進する
2. クライエントの内面に存在するが言語的表現が困難な問題点を明確にする
3. クライエントの関心を自らの内面に向け、洞察を促す
4. 問題意識または病識を醸成する
芸術療法の適用
―神経症、心因反応、心身症、うつ病、寛解期における統合失調症といった精神医学的症状や、児童・生徒の不適応行動に有効
―診断的な利用の場合は、何らかの課題や制限的要素を含む方が適している
―治療技法として用いる場合は、自由な反応を引き出しやすい技法が選択される
―自我機能の脆弱なクライエントは、虚弱な防衛がさらに弱体化し、危険な状態を招くことがあるため注意が必要
遊戯療法
―遊びを媒介として行われる心理療法
―子どもを対象として実施されることが多い
―治療関係においては、不安や緊張の解消に加え、治療者の援助のもとで自分の感情調節や現実への対処の仕方を学ぶ
遊戯療法の歴史と技法
―H.フック - ヘルムート(1913)によって始められ、A.フロイトやV.M.アクスラインによって発展された
―遊戯療法の立場には、精神分析療法、解放療法、関係療法、児童中心的療法、折衷的療法があり、立場によって技術は異なる
―技術の相違は、何を強調するかの違い
1. 遊びそのものの持つ体験効用の強調: 子どもの自発性に任せる
2. 感情の発散効果の強調: 遊びによって不満や不安の解消を図る
3. 治療の関係性の強調: 治療者との良好な関係を体験する
4. 教育的側面や学習の強調: 子どもに現実への対処方法を教える
―いろいろな遊具を与え自由に遊ばせる自由遊戯療法と、家族人形や粘土など特定の遊具に限り遊ばせる制限的遊戯療法がある
―個人療法としても集団療法としても行われる
―子どもの治療では、保護者のカウンセリングも並行して進められる場合が多い
読書療法
―カウンセリングの過程でクライエントに特定の物語を読ませ、物語を通して、目標に到達するために必要な道筋を洞察する
―書中の登場人物の内面を傍観者の立場で読むことができ、圧迫感や反発なしに他者の内的側面を率直に受け入れられる
読書療法に何を期待するか
1. 登場人物と自己を同一視し、批判的に語るときは、クライエント自身も自らの問題を洞察し、再適応への動機づけを持つ
2. 物語の中から、クライエント自身の問題解決に必要な情報を得る
3. 作中で示される様々な場面における、登場人物の振る舞いや感情表現を通じて適応的な価値の判断基準を得る
4. 抑圧されている欲求の充足を、自らを物語の登場人物に投影することで間接的に行う
読書療法の手続
―クライエントの問題に応じて適書を選定し、必要に応じてどのような態度で読み進むべきかを教示
―読後はその作品について話し合ったり、場合によっては感想文を書かせる(「振り返り」の過程)
⇒クライエントは自己洞察にいたる手がかりを自らの手で確認していく
―読み物の選択にあたり、クライエントの問題に直接関係のある事がらを主題とした書物を選択するかは状況によって異なる
e.g., カウンセリングの進捗状況、クライエントのパーソナリティ要因etc……
引用文献:
、
臨床心理学キーワード (有斐閣双書―KEYWORD SERIES)
Keyword:
交流分析、集団精神療法、サイコドラマ、ストレス免疫訓練、問題解決療法、対人関係療法、自律訓練法、バイオ・フィードバック、ブリーフサイコセラピー、家族療法、システムズアプローチ、催眠療法、森田療法、内観療法、絶食療法、ゲシュタルト療法、芸術療法、遊戯療法、読書療法
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