社会的影響
集団の中の個人
社会集団の2つの機能
①互いに依存関係にある人々が、対面的な相互作用を通して、共通の目標に向かって役割を果たす
―成員同士の相互作用と相互依存が主な要素
②集団は集団と意識されることによって影響力を発揮し、行動を大きく左右する
―「まとまり」として意識されることが、集団としての存在意義のもと
集団凝集性(Group Cohesiveness)Festinger et al., 1950
―成員を集団に引きつけてとどまらせるよう働く力
―凝集性の高い集団の特徴(Cohen et al., 1995)
1. 成員たちは目標に向かって互いに協力し合う傾向が強い
―結果的に集団の課題遂行にもプラスに働く
2. 過度に凝集性が高くなると、内部統制がおろそかになる危険性
―「集団思考」などが生起しやすい
3. リーダーの指示が通りやすく、成員相互の影響関係が強い
4. 自身を集団の一員とみなす集団同一視の傾向が強くなる
―他の集団よりも自分の集団に対してひいきする傾向も顕著(Karasawa, 1988)
5. 規範が成員の行動に及ぼす影響が強い
引用文献:社会心理学 (New Liberal Arts Selection)
集団規範(Group Norm)
―集団に共有されている、どのような行動が適切で、どのような行動が不適切であるかという信念
―明文化されているものもあれば、成員の間で暗黙の内に共有されているものもある
―規範に反する行動への対応にも、忠告のような明示的なものと「無視」のように暗示的なものとがある(Levine, 1989)
―集団規範が錯覚に与える影響
「光点の自動運動」を利用した研究(Sherif, 1935)
―暗室の中で静止した光点を見ていると、やがてこれが動いているような錯覚を覚えるようになる
現象を「光点の自動運動」と呼ぶ。シェリフは、実験参加者に、光点が何インチ動いたと思うか
を繰り返し尋ねた。すると、２人あるいは３人で参加していると、参加者の初回に見られたばら
つきが、セッションを重ねるごとに一点に集中していく様子が見られた。さらに集団のメンバー
を入れ替えると、新しく加わったものもただちに集団の基準を採用して判断し始めるようになった。
2つの規範
1. 命令的規範、正規の規範(Prescriptive Norm)
―「～してはいけない」という規範
―少数のフリーライダーが破ることで揺らぎやすい
2. 記述的規範、実際の規範(Descriptive Norm)
―他の成員が実際に取っている行動としての規範
―向社会的行動においては、命令的規範よりも影響力を持つ(Cialdini, et al., 1990)
―本人の倫理観に反する行動やコストがかかり過ぎる場合、デメリットが大きい場合には同調しにくくなる
リターン・ポテンシャル曲線(Return Potential Curve)Jackson, 1975
―集団のどの程度の行為がどの程度の反応を引き出すのかをグラフ化したもの
―横軸に規範遵守または逸脱の程度、縦軸に集団がリターンする報酬または罰の程度をとる
―規範の種類により、リターン・ポテンシャル曲線の形状は異なる
e.g., 「電車の中で電話をかけない」といった規範は、遵守されていればプラスのフィードバックはないが、
遵守されないと、直接・間接の否定的反応が帰って来る。一方、望ましい行為だが、コストがかかり、
多くの人が実行していない規範を守ると、賞賛が得られやすい
引用文献:社会心理学 (New Liberal Arts Selection)、、社会心理学 (キーワードコレクション)
社会的促進(Social Facilitation)Triplett, 1898
―一人で作業するよりも他者が存在することによって成績が良くなる現象
二つの社会的促進過程
―単に観察者が存在することによって促進される現象⇒ 観察者効果(Audience Effect)
―同一の課題を独立に行う他者が存在することによって促進される現象⇒ 共行動効果(Co-Action Effect)
―特に、容易な課題や慣れた課題の遂行は他者がいることで促進される
―他者が居ることで、課題の成績が低下することもある⇒ 社会的抑制
社会的抑制(Social Inhibition)Allport, 1924
―一人で作業するよりも他者が存在することによって、成績が低下する現象
―難しい課題や不慣れな作業を遂行する際には他者がいることで抑制が生じる
社会的促進と抑制のメカニズム
―ザイアンスの動因仮説(Drive Hypothesis)Zajonc, 1965
―他者の単なる存在によって個人の一般動因水準が上昇し、それが上昇した時に優位であった反応の
生起確率が高まると仮定。したがって、よく学習された課題の遂行のように正反応が優位な時には
促進され、不慣れな課題の遂行のように誤反応が優位な時には抑制されると考える
引用文献:社会心理学 (New Liberal Arts Selection)
社会的手抜き(Social Loafing)Ingham et al., 1974
―集団で作業することによって、個々人の遂行量が単独の時よりも低下する現象
―最初に指摘した農業工学者リンゲルマンの名を取ってリンゲルマン効果とも呼ばれる
社会的手抜きの原因
1. 個人間の相互調整のロス(Coordination Loss)
―コミュニケーション不足や単純に複数の作業によって力が分散するといった集団特有の環境要因
2. 責任の拡散
―他に人がいるため課題に取り組む動機づけが低下し、遂行量が減少する(Latane, 1981)
手抜きが起きる時と起きない時
1. 個々人の遂行を合成すると集団の遂行となるような加算的課題で生起しやすい
2. 集団の中で最も成績の良い人の成果が集団全体の成果とされるような課題では生起しにくい
3. 既存の知識から新しいアイディアを生み出すことが要求される課題では生起しにくい
4. 課題が集団や成員にとって魅力的な場合には、集団状況の方がむしろ成績が高くなる(Karau & Williams, 1993)
引用文献:社会心理学 (New Liberal Arts Selection)
社会的ジレンマ(Social Dilemma)
―集団状況において成員全員が利得を得ようと背信行為を取った場合に、全員が協力的行動を取る際の利得よりも小さくなる事態
―「自分一人ぐらいであれば…」という「社会的手抜き」の帰結の1つ
―一対一状況におけるジレンマを説明する際には「囚人のジレンマ」という言葉が用いられる
共有地の悲劇(The Tragedy of the Commons)Hardin, 1968
―コモンズと呼ばれる共有地を使用する農夫たちが自分勝手な利己的行動に走った結果、共有地が荒廃して使用できなくなる
というハーディンの例え。
―環境問題や投票行動、いじめなど様々な行動との関連が指摘されている
―人々の流動性・匿名性が高い都市社会では、非協力的な手抜き行動に対する監視や統制が難しくジレンマが表面化しやすい
引用文献:社会心理学用語辞典
、社会心理学 (New Liberal Arts Selection)、社会心理学 (キーワードコレクション)、社会的ジレンマのしくみ―「自分1人ぐらいの心理」の招くもの (セレクション社会心理学)
KEWORD：集団、集団凝集性、集団規範、記述的規範、命令的規範、リターン・ポテンシャル曲線、社会的促進、社会的手抜き、社会的抑制、動因仮説、社会的ジレンマ
集団規範(Group Norm)
―集団に共有されている、どのような行動が適切で、どのような行動が不適切であるかという信念
―明文化されているものもあれば、成員の間で暗黙の内に共有されているものもある
―規範に反する行動への対応にも、忠告のような明示的なものと「無視」のように暗示的なものとがある(Levine, 1989)
―集団規範が錯覚に与える影響
「光点の自動運動」を利用した研究(Sherif, 1935)
―暗室の中で静止した光点を見ていると、やがてこれが動いているような錯覚を覚えるようになる
現象を「光点の自動運動」と呼ぶ。シェリフは、実験参加者に、光点が何インチ動いたと思うか
を繰り返し尋ねた。すると、２人あるいは３人で参加していると、参加者の初回に見られたばら
つきが、セッションを重ねるごとに一点に集中していく様子が見られた。さらに集団のメンバー
を入れ替えると、新しく加わったものもただちに集団の基準を採用して判断し始めるようになった。
2つの規範
1. 命令的規範、正規の規範(Prescriptive Norm)
―「～してはいけない」という規範
―少数のフリーライダーが破ることで揺らぎやすい
2. 記述的規範、実際の規範(Descriptive Norm)
―他の成員が実際に取っている行動としての規範
―向社会的行動においては、命令的規範よりも影響力を持つ(Cialdini, et al., 1990)
―本人の倫理観に反する行動やコストがかかり過ぎる場合、デメリットが大きい場合には同調しにくくなる
リターン・ポテンシャル曲線(Return Potential Curve)Jackson, 1975
―集団のどの程度の行為がどの程度の反応を引き出すのかをグラフ化したもの
―横軸に規範遵守または逸脱の程度、縦軸に集団がリターンする報酬または罰の程度をとる
―規範の種類により、リターン・ポテンシャル曲線の形状は異なる
e.g., 「電車の中で電話をかけない」といった規範は、遵守されていればプラスのフィードバックはないが、
遵守されないと、直接・間接の否定的反応が帰って来る。一方、望ましい行為だが、コストがかかり、
多くの人が実行していない規範を守ると、賞賛が得られやすい
引用文献:社会心理学 (New Liberal Arts Selection)、、社会心理学 (キーワードコレクション)
社会的促進(Social Facilitation)Triplett, 1898
―一人で作業するよりも他者が存在することによって成績が良くなる現象
二つの社会的促進過程
―単に観察者が存在することによって促進される現象⇒ 観察者効果(Audience Effect)
―同一の課題を独立に行う他者が存在することによって促進される現象⇒ 共行動効果(Co-Action Effect)
―特に、容易な課題や慣れた課題の遂行は他者がいることで促進される
―他者が居ることで、課題の成績が低下することもある⇒ 社会的抑制
社会的抑制(Social Inhibition)Allport, 1924
―一人で作業するよりも他者が存在することによって、成績が低下する現象
―難しい課題や不慣れな作業を遂行する際には他者がいることで抑制が生じる
社会的促進と抑制のメカニズム
―ザイアンスの動因仮説(Drive Hypothesis)Zajonc, 1965
―他者の単なる存在によって個人の一般動因水準が上昇し、それが上昇した時に優位であった反応の
生起確率が高まると仮定。したがって、よく学習された課題の遂行のように正反応が優位な時には
促進され、不慣れな課題の遂行のように誤反応が優位な時には抑制されると考える
引用文献:社会心理学 (New Liberal Arts Selection)
社会的手抜き(Social Loafing)Ingham et al., 1974
―集団で作業することによって、個々人の遂行量が単独の時よりも低下する現象
―最初に指摘した農業工学者リンゲルマンの名を取ってリンゲルマン効果とも呼ばれる
社会的手抜きの原因
1. 個人間の相互調整のロス(Coordination Loss)
―コミュニケーション不足や単純に複数の作業によって力が分散するといった集団特有の環境要因
2. 責任の拡散
―他に人がいるため課題に取り組む動機づけが低下し、遂行量が減少する(Latane, 1981)
手抜きが起きる時と起きない時
1. 個々人の遂行を合成すると集団の遂行となるような加算的課題で生起しやすい
2. 集団の中で最も成績の良い人の成果が集団全体の成果とされるような課題では生起しにくい
3. 既存の知識から新しいアイディアを生み出すことが要求される課題では生起しにくい
4. 課題が集団や成員にとって魅力的な場合には、集団状況の方がむしろ成績が高くなる(Karau & Williams, 1993)
引用文献:社会心理学 (New Liberal Arts Selection)
社会的ジレンマ(Social Dilemma)
―集団状況において成員全員が利得を得ようと背信行為を取った場合に、全員が協力的行動を取る際の利得よりも小さくなる事態
―「自分一人ぐらいであれば…」という「社会的手抜き」の帰結の1つ
―一対一状況におけるジレンマを説明する際には「囚人のジレンマ」という言葉が用いられる
共有地の悲劇(The Tragedy of the Commons)Hardin, 1968
―コモンズと呼ばれる共有地を使用する農夫たちが自分勝手な利己的行動に走った結果、共有地が荒廃して使用できなくなる
というハーディンの例え。
―環境問題や投票行動、いじめなど様々な行動との関連が指摘されている
―人々の流動性・匿名性が高い都市社会では、非協力的な手抜き行動に対する監視や統制が難しくジレンマが表面化しやすい
引用文献:社会心理学用語辞典、社会心理学 (New Liberal Arts Selection)、社会心理学 (キーワードコレクション)、社会的ジレンマのしくみ―「自分1人ぐらいの心理」の招くもの (セレクション社会心理学)
集団の構造
集団内の地位
地位とは(Status)
―何らかの評価が付加されている集団内の各位置
地位の分類
1. 他人からみた威光(Prestige)が基準になる地位
2. 本人の満足が基準になる地位
3. 集団の目標と関連する能力や特性を根拠に付与される地位(e.g., 野球の四番)
4. 集団の目標などと直接は無関係の地位(e.g., 性別、年齢etc…)
―低地位に置かれた人は高地位者から社会的影響を受けやすく、服従しやすい
⇒社会的勢力の1つである、正当勢力
引用文献:社会心理学 (New Liberal Arts Selection)
役割
役割(Role)とは
―集団内で、ある位置を占める人がとるべき行動として周囲から期待されたものの集積
―集団で正規に設けられた公式的役割と、公式に定められないが、必要により自発的に生じた非公式役割とがある
―役割の分化によって、集団目標の達成のために各成員の貢献が効率よく組織化され、集団の機能も安定化(Bales & Cohen, 1979)
―役割と地位の影響力を示した実験として有名なジンバルドーの「スタンフォード監獄実験」がある(Zimbardo, 1971)
―集団内の役割は、行動の基準となるだけでなく、精神的健康に対する影響源になることもある
―複数の役割が葛藤を起こしている場合(e.g.,女性における仕事と家事の葛藤)は、役割葛藤のストレスを引き起こす可能性
引用文献:社会心理学 (New Liberal Arts Selection)、、社会心理学 (キーワードコレクション)
コミュニケーション構造
―組織化の進んだ集団では、異なる地位や役割を持つ成員の間で効率良く情報効果を行う必要がある
―どのようなコミュニケーション構造をもつ集団が成果を上げることができ、成員も満足できるのか？
課題の性質とコミュニケーション構造
1. 単純な課題においては車輪型が効果的(Shaw, 1951)
―課題が複雑になると、成員が共通して情報を持つことが、生産性においても満足度においても重要
2. 鎖型や円環型は成員が共通して情報を持てるが、情報伝達に時間がかかるという欠点
3. 完全連結型では成員が共通して情報を持てるが、組織が複雑になりすぎるおそれがある
→課題の性質や集団の特質に合わせた、ネットワーク構造作りが必要
引用文献:社会心理学 (New Liberal Arts Selection)
KEWORD：地位、役割、コミュニケーション構造
役割
役割(Role)とは
―集団内で、ある位置を占める人がとるべき行動として周囲から期待されたものの集積
―集団で正規に設けられた公式的役割と、公式に定められないが、必要により自発的に生じた非公式役割とがある
―役割の分化によって、集団目標の達成のために各成員の貢献が効率よく組織化され、集団の機能も安定化(Bales & Cohen, 1979)
―役割と地位の影響力を示した実験として有名なジンバルドーの「スタンフォード監獄実験」がある(Zimbardo, 1971)
―集団内の役割は、行動の基準となるだけでなく、精神的健康に対する影響源になることもある
―複数の役割が葛藤を起こしている場合(e.g.,女性における仕事と家事の葛藤)は、役割葛藤のストレスを引き起こす可能性
引用文献:社会心理学 (New Liberal Arts Selection)、、社会心理学 (キーワードコレクション)
コミュニケーション構造
―組織化の進んだ集団では、異なる地位や役割を持つ成員の間で効率良く情報効果を行う必要がある
―どのようなコミュニケーション構造をもつ集団が成果を上げることができ、成員も満足できるのか？
課題の性質とコミュニケーション構造
1. 単純な課題においては車輪型が効果的(Shaw, 1951)
―課題が複雑になると、成員が共通して情報を持つことが、生産性においても満足度においても重要
2. 鎖型や円環型は成員が共通して情報を持てるが、情報伝達に時間がかかるという欠点
3. 完全連結型では成員が共通して情報を持てるが、組織が複雑になりすぎるおそれがある
→課題の性質や集団の特質に合わせた、ネットワーク構造作りが必要
引用文献:社会心理学 (New Liberal Arts Selection)
「影響する」集団
集団への同調(Conformity)
―集団に所属すると、時には自分自身の意見や信念を曲げて、多数派に従ってしまうことがある
―類似した現象として「服従」がある
アッシュの同調実験(Asch, 1951)
―「標準刺激」と同じ長さの線分を「比較刺激」の3本の中から選ぶことを求められる。1人で行えば正答率が99％以上という、
簡単な課題であるが、他の実験参加者(サクラ)たちが口をそろえて誤った回答をすると、全体の32％で同調が見られた。
社会的影響の3つの段階(Kelman, 1961)
1. 追従(Compliance)
―影響を受ける人は、報酬を得たり罰を避けるために表面的に行動を一致させる
―私的な信念や態度を変化させることは無い
―アッシュの同調実験の参加者はこの状態だと考えられている
2. 同一化(Identification)
―自分が尊敬し価値をおく他者と類似した存在になるために自分の信念・態度や行動を変化させる
3. 内面化(Internalization)
―影響を与える人の主張に心から納得して自分の態度や行動を変える
同調の起こりやすさと大きさを規定する要因
1. 状況要因
―集団凝集性が高いほど、集団が大きくなるほど、集団内で低地位におかれるほど、同調は増大(Allen, 1965)
―多数者側が全員一致する事が重要
―1人でも反論を唱える者がいると同調は激減
2. 個人差要因
―自尊感情が弱い人、親和欲求が強い人は同調しやすい
同調の原因
1. 情報的影響(Deutsch & Gerard, 1955)
―多くの人の判断や行動は、「正解」に近いという信念に基づく
―全員一致が崩れると同調が低減するのは、主に情報的影響が低下するため
2. 規範的影響(Deutsch & Gerard, 1955)
―他の成員と異なる行動をすることによって、排除や集団の和を乱すことを防ぐことに基づく
―むしろ集団に合わせることで賞賛、集団の一致を得ようとする動機づけが働く
―凝集性や集団内の地位が同調に効果をもつのは主に規範的影響のため
―規範的影響のもとでは、合意性の過大推測を起こしやすい→ フォールス・コンセンサス効果
引用文献:現代心理学入門〈4〉社会心理学
、社会心理学 (New Liberal Arts Selection)、社会心理学 (キーワードコレクション)
服従(Obedience)
―ある個人が、権威者による命令などの社会的圧力に屈服し、自らの意志に反してそれに従う方向へ行動を変容させること
―同調の1つの様式
ミルグラムのアイヒマン実験(Milgram, 1963)
―記憶研究のために電撃の罰が役立つかというカバーストーリーを与えられた参加者が、学習者に対して何ボルトまでの電撃(最高
450ボルト)を与えるかを明らかにした実験。多くの参加者は緊張を感じ、途中で実験者に抗議するものもいたが、最大電撃レベル
の450ボルトまで与えた参加者は65％に達した。
―ミルグラムは、その後も16のバリエーション実験を行い、服従の原因を以下のように分析
1. 服従の背景条件
―親のしつけの過程で一方的に親の命に従うよう子どもに求めること
―学校文化や報酬の与え方を通じて社会的秩序の内面化を図っている
2. 実験協力への制約が持つ束縛要因
―権威者への礼儀正しさ、中断することのきまずさを避けようとする
3. 責任を取る権威者の存在による思考調整
―自分の責任を果たしていただけ、責任感の喪失
4. その他
―組織や制度の背後にある人間的要素を否定する「反擬人化」や、参加者が被害者を貶めること
同調との違い
―ミルグラムの分析
1. 行為がヒエラルキー構造の中で起きるか、同じ地位の人々の間で起きるか
2. 同調は模倣であり、行動の均質化をもたらすが、服従では権威の遵守が起きる
3. 参加者が事後に自分の行動を説明する際、同調者は否定するが、服従したものは自ら認める
ミルグラム実験の追試
―アイヒマン実験の再現を試みた研究が2009年に発表された(Burger, 2009)
―最高電圧は150ボルトなど倫理面に配慮
―45年前のミルグラムの結果とほとんど変わらなかった
引用文献:、社会心理学 (キーワードコレクション)、社会心理学 (New Liberal Arts Selection)
少数者の影響と革新
―つねに多数者が集団全体を制して、革新や変革が起こらないわけではない
―少数者が多数者をしのぐ影響力を持つのはどんな場合か？
モスコビッチらの色の判断実験(Moscovici et al., 1969)
―参加者は6人集団の1人に加えられて、明度は異なるが全て青色のスライドを多数呈示される。実際には、本当の参加者は
集団の中の4名で、彼らの目にはすべてのスライドが「青」に見えている。ところが、他の2名(サクラ)は、全てを一貫して
「緑」と呼び続けた。すると、多数者の中にも青色のスライドを見て「緑」と応える者が現れた。少数者の影響を受けず
表向きには「青」と答え続けた参加者も、「緑」の知覚領域が広がり、知覚の基準が変化していたことが分かった。
→少数者の影響は顕在的なレベルだけでなく、知覚現象のような非意識的なレベルにおいて観察される
少数者が影響力を持つ条件
1. ある争点について一貫して異論を唱え続けること
―問題となる争点以外の属性では多数者と共通点も備えていることが重要
2. 集団に変革が求められ、多数者が自分たちの観点を根本から疑うような状況(Nemeth, 1986)
e.g., 外的な脅威にさらされるなどの状況
引用文献:社会心理学 (New Liberal Arts Selection)
社会的勢力(Social Power)
―ある人物や組織が他の人々の行動に影響を及ぼすに至る潜在能力
レイヴンらの分類(French & Raven, 1959; Raven, 1965)
1. 報酬勢力、賞勢力(Reward Power)
―承認、賞賛、優遇、見返りとしての報酬など、実際的・心理的報酬を与えられる勢力
―勢力者の要求に従わせるためには監視が必要
2. 強制勢力、罰勢力(Coercive Power)
―否認、失跡、懲罰、脅迫、低地位への配置など、実際的・心理的罰を与えられる勢力
―勢力者の要求に従わせるためには監視が必要
3. 正当勢力(Legitimate Power)
―制服など、権威や地位の象徴を利用する勢力
―特定の役割についた人の指示には従うべきだという了解を共有している人のみに働く
4. 専門勢力(Expert Power)
―専門家の持つ説得力
5. 参照勢力、準拠勢力、関係勢力(Referent Power)
―好きな人物や理想とする人物が持つ影響力
6. 情報勢力(Infomation Power)
―ためしに取ってみた行動がもたらした結果(効能あるいは弊害)が持つ影響力
―選択肢そのものがもつ有用性
e.g., ある薬が効くと分かっていれば、誰が何と言おうとその薬を購入するなど
勢力行使の影響
―勢力を行使することが勢力を持つ者の助長、腐敗につながる
e.g., 権力の腐敗など
―権力はどのように衰退するのか?
勢力変性効果(The Metamorphic Effects of Power)Kipnis, 1972, 1976
①勢力行使の手段を持つこと自体が、それを使用する可能性を高める
②勢力を行使するほど、その人は自分が相手の行動を制御していると信じるようになる
③相手の功績を自分のものと考えてしまい、その人の価値を低く見積もるようになる
④相手の価値を低めることで、勢力を行使する人とその対象者との社会的距離が遠くなる
⑤勢力を行使することが、その人の自尊心を高める
引用文献:現代心理学入門〈4〉社会心理学、社会心理学 (New Liberal Arts Selection)
行動感染、行動伝染(Behavioral Contagion)Lippitt, et al., 1952
―ある行動主体が他者に影響を与えようと積極的な意図を持たずに行った行動にも関わらず、他者がそれと同じ行動を無意識に示す事
―社会的勢力研究の中で指摘された現象
―一般的に勢力の大きい者の行動が小さい者へ感染することが多い
群集行動の形成要素としての行動感染
―緊急場面における情緒の高まりや被暗示性が行動感染を引き起こす
→暴動などの群集行動につながる
―行動感染はバンデューラのモデリング概念に統合されて説明される
引用文献:社会心理学用語辞典
KEWORD：同調、服従、少数者の影響、社会的勢力、行動感染
、社会心理学 (New Liberal Arts Selection)、社会心理学 (キーワードコレクション)
服従(Obedience)
―ある個人が、権威者による命令などの社会的圧力に屈服し、自らの意志に反してそれに従う方向へ行動を変容させること
―同調の1つの様式
ミルグラムのアイヒマン実験(Milgram, 1963)
―記憶研究のために電撃の罰が役立つかというカバーストーリーを与えられた参加者が、学習者に対して何ボルトまでの電撃(最高
450ボルト)を与えるかを明らかにした実験。多くの参加者は緊張を感じ、途中で実験者に抗議するものもいたが、最大電撃レベル
の450ボルトまで与えた参加者は65％に達した。
―ミルグラムは、その後も16のバリエーション実験を行い、服従の原因を以下のように分析
1. 服従の背景条件
―親のしつけの過程で一方的に親の命に従うよう子どもに求めること
―学校文化や報酬の与え方を通じて社会的秩序の内面化を図っている
2. 実験協力への制約が持つ束縛要因
―権威者への礼儀正しさ、中断することのきまずさを避けようとする
3. 責任を取る権威者の存在による思考調整
―自分の責任を果たしていただけ、責任感の喪失
4. その他
―組織や制度の背後にある人間的要素を否定する「反擬人化」や、参加者が被害者を貶めること
同調との違い
―ミルグラムの分析
1. 行為がヒエラルキー構造の中で起きるか、同じ地位の人々の間で起きるか
2. 同調は模倣であり、行動の均質化をもたらすが、服従では権威の遵守が起きる
3. 参加者が事後に自分の行動を説明する際、同調者は否定するが、服従したものは自ら認める
ミルグラム実験の追試
―アイヒマン実験の再現を試みた研究が2009年に発表された(Burger, 2009)
―最高電圧は150ボルトなど倫理面に配慮
―45年前のミルグラムの結果とほとんど変わらなかった
引用文献:、社会心理学 (キーワードコレクション)、社会心理学 (New Liberal Arts Selection)
少数者の影響と革新
―つねに多数者が集団全体を制して、革新や変革が起こらないわけではない
―少数者が多数者をしのぐ影響力を持つのはどんな場合か？
モスコビッチらの色の判断実験(Moscovici et al., 1969)
―参加者は6人集団の1人に加えられて、明度は異なるが全て青色のスライドを多数呈示される。実際には、本当の参加者は
集団の中の4名で、彼らの目にはすべてのスライドが「青」に見えている。ところが、他の2名(サクラ)は、全てを一貫して
「緑」と呼び続けた。すると、多数者の中にも青色のスライドを見て「緑」と応える者が現れた。少数者の影響を受けず
表向きには「青」と答え続けた参加者も、「緑」の知覚領域が広がり、知覚の基準が変化していたことが分かった。
→少数者の影響は顕在的なレベルだけでなく、知覚現象のような非意識的なレベルにおいて観察される
少数者が影響力を持つ条件
1. ある争点について一貫して異論を唱え続けること
―問題となる争点以外の属性では多数者と共通点も備えていることが重要
2. 集団に変革が求められ、多数者が自分たちの観点を根本から疑うような状況(Nemeth, 1986)
e.g., 外的な脅威にさらされるなどの状況
引用文献:社会心理学 (New Liberal Arts Selection)
社会的勢力(Social Power)
―ある人物や組織が他の人々の行動に影響を及ぼすに至る潜在能力
レイヴンらの分類(French & Raven, 1959; Raven, 1965)
1. 報酬勢力、賞勢力(Reward Power)
―承認、賞賛、優遇、見返りとしての報酬など、実際的・心理的報酬を与えられる勢力
―勢力者の要求に従わせるためには監視が必要
2. 強制勢力、罰勢力(Coercive Power)
―否認、失跡、懲罰、脅迫、低地位への配置など、実際的・心理的罰を与えられる勢力
―勢力者の要求に従わせるためには監視が必要
3. 正当勢力(Legitimate Power)
―制服など、権威や地位の象徴を利用する勢力
―特定の役割についた人の指示には従うべきだという了解を共有している人のみに働く
4. 専門勢力(Expert Power)
―専門家の持つ説得力
5. 参照勢力、準拠勢力、関係勢力(Referent Power)
―好きな人物や理想とする人物が持つ影響力
6. 情報勢力(Infomation Power)
―ためしに取ってみた行動がもたらした結果(効能あるいは弊害)が持つ影響力
―選択肢そのものがもつ有用性
e.g., ある薬が効くと分かっていれば、誰が何と言おうとその薬を購入するなど
勢力行使の影響
―勢力を行使することが勢力を持つ者の助長、腐敗につながる
e.g., 権力の腐敗など
―権力はどのように衰退するのか?
勢力変性効果(The Metamorphic Effects of Power)Kipnis, 1972, 1976
①勢力行使の手段を持つこと自体が、それを使用する可能性を高める
②勢力を行使するほど、その人は自分が相手の行動を制御していると信じるようになる
③相手の功績を自分のものと考えてしまい、その人の価値を低く見積もるようになる
④相手の価値を低めることで、勢力を行使する人とその対象者との社会的距離が遠くなる
⑤勢力を行使することが、その人の自尊心を高める
引用文献:現代心理学入門〈4〉社会心理学、社会心理学 (New Liberal Arts Selection)
行動感染、行動伝染(Behavioral Contagion)Lippitt, et al., 1952
―ある行動主体が他者に影響を与えようと積極的な意図を持たずに行った行動にも関わらず、他者がそれと同じ行動を無意識に示す事
―社会的勢力研究の中で指摘された現象
―一般的に勢力の大きい者の行動が小さい者へ感染することが多い
群集行動の形成要素としての行動感染
―緊急場面における情緒の高まりや被暗示性が行動感染を引き起こす
→暴動などの群集行動につながる
―行動感染はバンデューラのモデリング概念に統合されて説明される
引用文献:社会心理学用語辞典
「影響する」個人
重要他者(Significant Other)
―自分にとって大切な人や影響力のある人
―様々な形で人々の行動に影響を与える
非意識的な過程による影響
―親しい友人について考えると、仕事仲間について考えるよりも、依頼に応じやすい(Fitzsimons & Bargh, 2003)
―友人との関係には「援助」が埋め込まれており、「援助」目標が活性化しやすくなるため
―重要他者のプライミングによって、その他者の期待が活性化し、その期待が目標として機能することもある(Shah, 2003)
―重要他者が自分をコントロールしていると感じると、プライミングによって期待と逆の行動を取る(Chartrand et al., 2008)
引用文献:社会心理学 (New Liberal Arts Selection)
目標伝染(Goal Contagion)Aarts et al., 2004
―他者の目標を理解する事で、その目標が自分の中で活性化し、自分の目標として自動的に追及される現象
アーツらの実験
―参加者は、ある学生が休暇の過ごし方について他の学生と話し合っている様子を記述した文章を読んだ。
半数の参加者は、主人公の学生が農場へ行ってアシスタントとして働く文章を読み、もう半分の学生は、
ボランティアをするという文章を読んだ。その際、課題が早く終了して時間が十分にあった場合に限り、
賞金が当たるくじに参加できると教示された。すると、もともと参加者自身がお金を必要としている程度
が強い参加者で、お金を稼ぐ目標を読んだ場合にのみ、課題の回答スピードが速くなっていた。
―目標伝染は、目標の活性化によって起こるので、もともと自分が持っている場合にのみ生起
→社会的に承認されない目標や反社会的な目標を追及しているところを観察しても、その目標は自動的に追及されない
―目標と同時にネガティブな単語を呈示し、一時的に結び付けても、その目標は追及されることはない(Aarts et al., 2007)
引用文献:社会心理学 (New Liberal Arts Selection)
KEWORD：重要他者、目標伝染
目標伝染(Goal Contagion)Aarts et al., 2004
―他者の目標を理解する事で、その目標が自分の中で活性化し、自分の目標として自動的に追及される現象
アーツらの実験
―参加者は、ある学生が休暇の過ごし方について他の学生と話し合っている様子を記述した文章を読んだ。
半数の参加者は、主人公の学生が農場へ行ってアシスタントとして働く文章を読み、もう半分の学生は、
ボランティアをするという文章を読んだ。その際、課題が早く終了して時間が十分にあった場合に限り、
賞金が当たるくじに参加できると教示された。すると、もともと参加者自身がお金を必要としている程度
が強い参加者で、お金を稼ぐ目標を読んだ場合にのみ、課題の回答スピードが速くなっていた。
―目標伝染は、目標の活性化によって起こるので、もともと自分が持っている場合にのみ生起
→社会的に承認されない目標や反社会的な目標を追及しているところを観察しても、その目標は自動的に追及されない
―目標と同時にネガティブな単語を呈示し、一時的に結び付けても、その目標は追及されることはない(Aarts et al., 2007)
引用文献:社会心理学 (New Liberal Arts Selection)
集団の意思決定
集団や組織は、様々な問題に取り組んでいる
―集団の意思決定の過程は、個人の決定とどのように異なるのか?
―意思決定の「質」は個人の決定よりも常に正確で優れたものなのか?
集団極性化(Group Polarization)
―集団決定を行う際には、個人の決定よりも、初期の態度で優勢であった傾向がより極端な方向の結論に向かう傾向
リスキー・シフト(Risky Shift)Stoner, 1961
―集団事態では、人が1人のときよりも進んで大きな危険を受けいれる現象
―後に、コーシャス・シフトが発見されることで、集団極性化現象として統合された
コーシャス・シフト(Cautious Shift)
―集団事態で、人が1人で意思決定するよりも、より安全な結論を下す事
集団極性化の過程
1. 社会的比較(Social Comparison)Sanders & Baron, 1977
―他者よりもいっそう極端な立場を主張することで、肯定的な印象を得ようとするため
―集団で判断することで、もともと持っていた意見を他者のものと比較するため
―実際、極端な判断を下すことが能力の高さを示す場合、集団極性化が生じやすい(Baron & Roper, 1976)
2. 説得的論拠(Persuasive Arguments)Isenberg, 1986
―集団の討議の中で自分の立場を支持する論拠を積極的に受け入れようとするため
―それぞれのメンバーが自分の立場が正しいことを確認し、さらに極端な立場をとるようになる
引用文献:現代心理学入門〈4〉社会心理学
集団思考、集団浅慮(Group Think)Janis, 1982
―集団内の意見の一致を重視するあまり、取りうる可能性のあるすべての行動を客観的に評価しようとしなくなる思考様式
―凝集性の高い集団で生起しやすい
―集団が外部から隔離されている、外的脅威の存在などの要因によって生起しやすい
集団思考の8つの症状
1. 無敵幻想
―過度に楽観的になり、危険の兆候に対して注意を向けなくなる
2. 合理化
―過去の決定を再考するよりも、それを正当化する事に多くの時間を費やす
3. 集団の道徳性の信奉
―自分の集団の道徳基準にのみ従う
4. 外集団のステレオタイプ化
―集団の外に居る者を「悪者」で「愚者」と見なす
5. 同調への圧力
―異議が歓迎されない。集団の計画に疑義を提出すると、議論でなく個人的に中傷される
6. 自己検閲
―集団で意見が一致している場合、疑念を述べることを差し控えたり、自らその価値を低めたりする
7. 全員一致の幻想
―同調や自己検閲の結果、全員の意見が一致しているという幻想が生まれる(フォールス・コンセンサス効果)
8. 自薦の用心棒
―集団成員が決定の道徳性や効果性に疑念を抱かせる情報を考慮しないように働きかける成員が出現
引用文献:現代心理学入門〈4〉社会心理学
KEWORD：集団極性化、リスキー・シフト、コーシャス・シフト、集団思考(集団浅慮)
集団のリーダーシップ
リーダーシップ(Leadership)
―包括的には、集団目標の達成に向けてなされる集団の諸活動に影響を与える過程
―一般的には、集団のリーダーや高地位者が、成員に対して発揮する影響力を指すことが多い
引用文献:新・心理学の基礎知識 (有斐閣ブックス)
リーダーシップ二次元モデル
―40年代までのリーダーシップ研究は、優れたリーダーに備わった能力や資質、パーソナリティーに着目した「特性アプローチ」が主流
―優秀なリーダーになる人は、一般のメンバーとは異なる優れた資質を持っているはずだという前提に立った研究アプローチ
e.g., ストッジルのリーダー特性研究
―50年代以降、リーダーシップを発揮する上で有効な行動に着目した「行動アプローチ」による研究が盛んになった
―端緒を開いたのが、レヴィンらの「専制型」「民主型」「放任型」の3種類のリーダーシップスタイルと集団の生産性に関する研究
―その後、望ましいリーダー行動とは「目標達成」と「人間関係維持」の行動という2つの次元に大別された点で一致(金井, 2005)
e.g., マネジアル・グリッド理論、PM理論etc……
1. マネジアル・グリッド(Managerial Grid)Blake & Mouton, 1964
―横軸に生産に対する関心の程度、縦軸に人間への関心の程度を配して、リーダーシップを評価
2. PM理論(PM Throy)三隅, 1966
―P機能(Performance; 目標達成機能)とM機能(Maintenance; 集団維持機能)の程度によってリーダーを4タイプに類型化
―各タイプのリーダーシップが組織の業績や成員のモラール(士気)に及ぼす影響を検討した
―いずれの理論も、「目標達成」と「人間関係維持」機能の両方が高いリーダーが優れたリーダーとされる
引用文献:社会心理学 (New Liberal Arts Selection)、新・心理学の基礎知識 (有斐閣ブックス)
コンティンジェンシー(状況即応)・アプローチ(Contingency Approach)
―70年代頃からは、組織に置かれた状況に応じて効果的なリーダーシップは異なるという考え方が現れた
―コンティンジェンシー・アプローチに属するいずれのモデルも古典的な2次元分類に対する信頼が根強く残っている
①フィードラーのコンティンジェンシー・モデル(Fiedler, 1967)
―リーダーが組織を統制しやすい状況か否かによって、課題志向型と関係志向型のリーダーシップのいずれが有効かは異なる
―リーダーシップ・スタイルの指標として、リーダーシップ自身の「最も苦手とする同僚(Least Preferred Co-worker)」
に対する評価がどの程度感情的なものかを表す「LPC得点」を用いている
―LPCモデル(LPC Model)とも呼ばれる
②パス‐ゴール理論(Path-Goal Theory)House, 1971; House & Dessler, 1974
―リーダーシップ・スタイルを指示型、支援型、参加型、達成志向型の4種類に類型化
―組織のおかれた状況や成員の特性に応じて異なるリーダーシップが必要になると想定
―リーダーに求められるのは、成員が目標(ゴール)を達成するために通るべき道筋(パス)を適切に示す事
e.g., 単純なルーティン・ワークが多い職場では、成員の感情に配慮し気遣いを見せるような支援型のリーダーシップが有効
非定型的な業務の場合には、仕事の進め方を明確に示すような支持型のリーダーシップが有効
③SL理論(SL Theory)Hersey & Blanchard, 1977
―成員の成熟度が時系列的に4段階に区分され、それぞれの段階で効果的なリーダーシップが示されている
―4タイプのリーダーシップは、マネジアル・グリッドにならった課題志向と関係志向の2軸の高低の組み合わせによって記述
状況1. 教示型リーダーシップ; 具体的に指示し、行動させる
状況2. 説得型リーダーシップ; 説明し、疑問に答える
状況3. 参加型リーダーシップ; 自立を励まし、ともに考える
状況4. 委譲型リーダーシップ; 権限や責任を委譲する
引用文献:社会心理学 (New Liberal Arts Selection)
リーダーシップ認知論
―コンティンジェンシーアプローチと並行して、フォロワーの認知に注目した認知論アプローチも盛んに行われた
―リーダーシップの効果はフォロワーの認知によって影響を受けることに注目したアプローチ
e.g., リーダーシップ幻想論
リーダーシップ幻想論(Leadership Romance)
―集団が優れた業績を上げた時、優れたリーダーシップにその原因を自動的に帰属しがちな認知バイアス
―リーダーシップを、リーダーとメンバーの相互作用によって規定されるものとして視点の広がりをもたらした
引用文献:新・心理学の基礎知識 (有斐閣ブックス)
変革型リーダーシップ(Transformational Leadership)
―80年代以降、時代の流れに応じて組織変革の重要性が論じられたことで変革型リーダーシップ研究に注目が集まってきた
―単独のリーダーによるトップダウン的で一方向的な影響プロセスの限界を超えた理論群の登場
―よりインタラクティブでダイナミックなプロセスとしてのリーダーシップ構造に焦点をあてる
①マネジメントとリーダーシップ(Kotter, 1990)
―マネジメントとリーダーシップの概念を区別し、組織変革のために必要なそれぞれの果たすべき役割を示した
―コッターはリーダーシップの果たすべき役割が70～90%、マネジメントは10～30%であるとした
1. マネジメント
―人と技術からなる複雑なシステムを円滑に動かし続けるための一連のプロセス
2. リーダーシップ
―組織を創造する、もしくは大きく変化する環境に組織を適応させる一連のプロセス
コッターの組織変革のプロセス
1. 緊急課題であるという認識の徹底
2. 強力な推進チームの結成
3. ビジョンの策定
4. ビジョンの伝達
5. ビジョンに向けた人々の行動への支援
6. 短期間で成果を上げるための計画策定
7. 改善事項の定着とさらなる変革の推進
8. 新たなアプローチの制度化
―それぞれの局面でリーダーが人々を的確に主導する事が重要
②ミドル・マネージャーの役割(Kanter, 1983)
―組織変革の推進者としてはトップではなく、ミドル・マネージャーの役割が大きい
―ミドル・マネージャーのイントラプレナー(社内企業家)としての変革の実行ステップ
1. 自分なりの視点で「問題設定」を行う
2. 社外まで含めた働きかけによって人的な「連合体を形成」
3. 連合体のネットワークから得られる情報や資源、サポートを積極的に「動員」する
③非公式リーダー、フォロワーシップ(Followership)
―非公式なリーダーが組織内に多く存在することの有効性について論じる研究の増加
―企業組織の改革管理チームを対象とした研究でリーダーシップを比較(Pearce & Sims, 2002)
1. 管理者のリーダーシップとしての垂直的リーダーシップ
2. 一般成員が発揮する影響力の平均として測定された共有リーダーシップ
―業績の予測因として後者がより有効であることが示唆されている
―組織内の複数の成員にリーダーシップが分化し、相互に機能を補い合うことによって、
多面的リーダーシップが果たされる可能性も指摘されている(e.g., 高口ら, 2002)
―組織変革には、リーダーを支えるフォロワーシップの貢献が重要であるとする議論もある(Kelley, 1992)
引用文献:社会心理学 (New Liberal Arts Selection)
KEWORD：リーダーシップ、マネジアル・グリッド理論、PM理論、コンティンジェンシー・モデル、パス・ゴール理論、SL理論、リーダーシップ幻想論、変革型リーダーシップ、非公式リーダー
→社会心理学の用語一覧へ
リーダーシップ二次元モデル
―40年代までのリーダーシップ研究は、優れたリーダーに備わった能力や資質、パーソナリティーに着目した「特性アプローチ」が主流
―優秀なリーダーになる人は、一般のメンバーとは異なる優れた資質を持っているはずだという前提に立った研究アプローチ
e.g., ストッジルのリーダー特性研究
―50年代以降、リーダーシップを発揮する上で有効な行動に着目した「行動アプローチ」による研究が盛んになった
―端緒を開いたのが、レヴィンらの「専制型」「民主型」「放任型」の3種類のリーダーシップスタイルと集団の生産性に関する研究
―その後、望ましいリーダー行動とは「目標達成」と「人間関係維持」の行動という2つの次元に大別された点で一致(金井, 2005)
e.g., マネジアル・グリッド理論、PM理論etc……
1. マネジアル・グリッド(Managerial Grid)Blake & Mouton, 1964
―横軸に生産に対する関心の程度、縦軸に人間への関心の程度を配して、リーダーシップを評価
2. PM理論(PM Throy)三隅, 1966
―P機能(Performance; 目標達成機能)とM機能(Maintenance; 集団維持機能)の程度によってリーダーを4タイプに類型化
―各タイプのリーダーシップが組織の業績や成員のモラール(士気)に及ぼす影響を検討した
―いずれの理論も、「目標達成」と「人間関係維持」機能の両方が高いリーダーが優れたリーダーとされる
引用文献:社会心理学 (New Liberal Arts Selection)、新・心理学の基礎知識 (有斐閣ブックス)
コンティンジェンシー(状況即応)・アプローチ(Contingency Approach)
―70年代頃からは、組織に置かれた状況に応じて効果的なリーダーシップは異なるという考え方が現れた
―コンティンジェンシー・アプローチに属するいずれのモデルも古典的な2次元分類に対する信頼が根強く残っている
①フィードラーのコンティンジェンシー・モデル(Fiedler, 1967)
―リーダーが組織を統制しやすい状況か否かによって、課題志向型と関係志向型のリーダーシップのいずれが有効かは異なる
―リーダーシップ・スタイルの指標として、リーダーシップ自身の「最も苦手とする同僚(Least Preferred Co-worker)」
に対する評価がどの程度感情的なものかを表す「LPC得点」を用いている
―LPCモデル(LPC Model)とも呼ばれる
②パス‐ゴール理論(Path-Goal Theory)House, 1971; House & Dessler, 1974
―リーダーシップ・スタイルを指示型、支援型、参加型、達成志向型の4種類に類型化
―組織のおかれた状況や成員の特性に応じて異なるリーダーシップが必要になると想定
―リーダーに求められるのは、成員が目標(ゴール)を達成するために通るべき道筋(パス)を適切に示す事
e.g., 単純なルーティン・ワークが多い職場では、成員の感情に配慮し気遣いを見せるような支援型のリーダーシップが有効
非定型的な業務の場合には、仕事の進め方を明確に示すような支持型のリーダーシップが有効
③SL理論(SL Theory)Hersey & Blanchard, 1977
―成員の成熟度が時系列的に4段階に区分され、それぞれの段階で効果的なリーダーシップが示されている
―4タイプのリーダーシップは、マネジアル・グリッドにならった課題志向と関係志向の2軸の高低の組み合わせによって記述
状況1. 教示型リーダーシップ; 具体的に指示し、行動させる
状況2. 説得型リーダーシップ; 説明し、疑問に答える
状況3. 参加型リーダーシップ; 自立を励まし、ともに考える
状況4. 委譲型リーダーシップ; 権限や責任を委譲する
引用文献:社会心理学 (New Liberal Arts Selection)
リーダーシップ認知論
―コンティンジェンシーアプローチと並行して、フォロワーの認知に注目した認知論アプローチも盛んに行われた
―リーダーシップの効果はフォロワーの認知によって影響を受けることに注目したアプローチ
e.g., リーダーシップ幻想論
リーダーシップ幻想論(Leadership Romance)
―集団が優れた業績を上げた時、優れたリーダーシップにその原因を自動的に帰属しがちな認知バイアス
―リーダーシップを、リーダーとメンバーの相互作用によって規定されるものとして視点の広がりをもたらした
引用文献:新・心理学の基礎知識 (有斐閣ブックス)
変革型リーダーシップ(Transformational Leadership)
―80年代以降、時代の流れに応じて組織変革の重要性が論じられたことで変革型リーダーシップ研究に注目が集まってきた
―単独のリーダーによるトップダウン的で一方向的な影響プロセスの限界を超えた理論群の登場
―よりインタラクティブでダイナミックなプロセスとしてのリーダーシップ構造に焦点をあてる
①マネジメントとリーダーシップ(Kotter, 1990)
―マネジメントとリーダーシップの概念を区別し、組織変革のために必要なそれぞれの果たすべき役割を示した
―コッターはリーダーシップの果たすべき役割が70～90%、マネジメントは10～30%であるとした
1. マネジメント
―人と技術からなる複雑なシステムを円滑に動かし続けるための一連のプロセス
2. リーダーシップ
―組織を創造する、もしくは大きく変化する環境に組織を適応させる一連のプロセス
コッターの組織変革のプロセス
1. 緊急課題であるという認識の徹底
2. 強力な推進チームの結成
3. ビジョンの策定
4. ビジョンの伝達
5. ビジョンに向けた人々の行動への支援
6. 短期間で成果を上げるための計画策定
7. 改善事項の定着とさらなる変革の推進
8. 新たなアプローチの制度化
―それぞれの局面でリーダーが人々を的確に主導する事が重要
②ミドル・マネージャーの役割(Kanter, 1983)
―組織変革の推進者としてはトップではなく、ミドル・マネージャーの役割が大きい
―ミドル・マネージャーのイントラプレナー(社内企業家)としての変革の実行ステップ
1. 自分なりの視点で「問題設定」を行う
2. 社外まで含めた働きかけによって人的な「連合体を形成」
3. 連合体のネットワークから得られる情報や資源、サポートを積極的に「動員」する
③非公式リーダー、フォロワーシップ(Followership)
―非公式なリーダーが組織内に多く存在することの有効性について論じる研究の増加
―企業組織の改革管理チームを対象とした研究でリーダーシップを比較(Pearce & Sims, 2002)
1. 管理者のリーダーシップとしての垂直的リーダーシップ
2. 一般成員が発揮する影響力の平均として測定された共有リーダーシップ
―業績の予測因として後者がより有効であることが示唆されている
―組織内の複数の成員にリーダーシップが分化し、相互に機能を補い合うことによって、
多面的リーダーシップが果たされる可能性も指摘されている(e.g., 高口ら, 2002)
―組織変革には、リーダーを支えるフォロワーシップの貢献が重要であるとする議論もある(Kelley, 1992)
引用文献:社会心理学 (New Liberal Arts Selection)