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20世紀の著名な心理学者100人

1.バラス・スキナー[Burrhus Frederic Skinner]
新行動主義の心理学者であり「行動分析」の創始者。レバーを押すと自動的に餌が出てくる、ネズミ(ラット)用の箱型実験装置「スキナー箱」を考案し、 「レスポンデント条件づけ」と「オペラント条件づけ」を区別した。オペラント条件づけを教育に応用する際「プログラム学習」と、これを具現化した「ティー チング・マシン」を開発した。また、オペラント条件づけ研究は「行動療法」などをもたらした。
オペラント条件づけ
スキナーのスピーチ

2. ジャン・ピアジェ[Jean Piaget]
人間の精神発達の過程を「認識」能力という限定した研究対象の発達から説明する事を求め、発達心理学の世界に足を踏み入れた。ピアジェは、知的な発達 を、子どもが外界を認識するための心的枠組みである「シェマ」を環境との活発な相互作用によって「同化」「調節」「均衡化」させていく過程として捉え、 「認知発達理論」を提唱した。認知発達理論の中で、知能は「感覚運動期」「前操作」「具体的操作」「形式的操作」の4段階をたどるとした。
ピアジェの発達段階
ピアジェのビデオ(Part1)

3. ジークムント・フロイト[Sigmund Freud]
精神科医で「精神分析」の創始者であり、「神経症」とりわけ「ヒステリー」患者の治療に専心した。精神分析の特徴は、人間の心的状態は現在の意識のみ では説明できない、「無意識」や過去の体験といった要素が大きいために意識をいくら分析しても理解できないとした点にある。精神分析の考え方は、心理 学だけでなく隣接学問に対して大きな影響を与えた。また、フロイトは「パーソナリティ」発達のメカニズムに関する仮説なども提唱している。
フロイトのドキュメンタリー(Part1)

4. アルバート・バンデューラ[Albert Bandura]
新行動主義の学習理論に対して、「モデリング」や「観察学習」による「代理的強化」や「自己強化」によっても行動は変容するとして、特にパーソナリティ 形成を人間の社会化過程に生じる学習過程として位置づけ「社会的学習理論」を唱えた。また、ある具体的な状況において自分が適切な行動を遂行で きるという確信の程度を意味する「自己効力感」を提唱した。
社会的学習(ボボ人形)
バンデューラへのインタビュー

5. レオン・フェスティンガー[Leon Festinger]
アメリカの社会心理学者。意見と能力の自己評価動因を前提とする「社会的比較過程の理論」と、人間は矛盾を嫌うという過程に基づく「認知的不協和理論」 を提唱したことで知られる。認知的不協和理論の提唱は、人は認知的に一貫した存在である事を追及するという「一貫性追求者」の人間観を生み出した。行動 主義の時代の中で、行動の背後に認知や動機という構成概念の存在を想定したことは、後の実験社会心理学の研究パラダイムに大きな影響を与えた。
認知的不協和

6. カール・ロジャーズ[Carl Ransom Rogers]
アメリカの心理学者で、「クライエント中心療法」の創始者。非行少年の面接を通して、当時行われていた心理療法が再犯防止にあまり役立たない事を経験し、 既存の「指示的療法」とは正反対の治療観を展開した。これは当初「非指示的精神療法」と呼ばれたが、後にクライエント中心療法と称されるようになった。 また「エンカウンター・グループ」の理論的解明と実践に力を尽くした。実証科学的方法論を用いて自己成長の在り方を検討した点での功績は大きい。
ロジャーズへのインタビュー
ロジャーズの講義(共感について)

7. スタンレー・シャクター[Stanley Schachter]
アメリカの社会心理学者。「不安」が親和欲求を高めるという仮説を実証するための実験的研究を行った。また、情動状態は生理的要因そのものによって決定 するのではなく、生理的反応をどのように認知するかによって生起するという「情動の二要因理論」を提唱した。その後、これらの理論や研究は、肥満と接触 行動の関連性の検討や、犯罪常習者や喫煙行動などの研究にも応用されている。
親和欲求の実験(Schacter)

8. ニール・ミラー[Neal Elgar Miller]
アメリカの心理学者。学習理論の立場から、「不安」や葛藤などについての研究を行った。不安や恐怖が獲得性の「動因」としてさまざまな行動を動機付ける 事を確認する研究や、餌に接近する際に電撃が与えられる装置を用いた葛藤の研究、「フラストレーション」が攻撃行動を生むとの仮説、「バイオフィードバッ ク」研究などで知られる。「精神分析」的概念を学習理論によって説明する事も試みている。
学習における報酬と動機づけ

9. エドワード・ソーンダイク[Edward Lee Thorndike]
実験および教育心理学者。1986年前後から動物の「知能」をめぐって「学習」に関する研究を行った。その中で、有名なネコを用いた「問題箱」の「試行錯誤」 学習の実験も行われた。ここから、学習には動物の能動的な行動が必要であるという「練習の法則」や「効果の法則」という結果が導かれた。効果の法則はスキ ナーに引き継がれ、強化の概念として確立された。その後、知能、個人差、教育測定などといった教育心理学的研究にも貢献した。
パズルボックス

10. アブラハム・マズロー[Abraham Harold Maslow]
アメリカの心理学者。人間は自己実現に向かって絶えず成長する生きものであると仮定し、「自己実現理論」と呼ばれる人格理論を提唱した。自己実現理論は、 人間の動機や欲求に焦点を置いた人格理論であり@生理的欲求、A安全欲求、B所属と愛情欲求、C自尊欲求、D自己実現欲求という5つの欲求を階層的に捉え ている点で特徴的であるとされ、この階層構造を想定した理論は「欲求階層説」と呼ばれている。
マズローのドキュメンタリー
マズローのインタビュー


11. ゴードン・オールポート[Gordon Willard Allport]
アメリカの心理学者。「パーソナリティ」の研究を中心としていた。また、人格理論においては、「動機づけ」に関する基礎概念である「機能的自立性」などの 提唱もしている。他方で、社会心理学の分野でも「偏見」を低減するための接触仮説の提言や、「流言」に関する研究、社会的行動を予測・説明するための「態 度」と呼ばれる仮説的構成概念の定義、そこから発展して「モラール」の定義も行っている。

12. エリク・ホーンブルガー・エリクソン[Erik Homburger Erikson]
ハルトマンの「自我心理学」、社会を重視した「新フロイト派」の視点を取り入れ、「精神分析的自我心理学」を展開した。自身の出自によって、周辺人として の境遇を生きた過去から「アイデンティティ」という概念を生み出した。また、18歳から教育を受けず、放浪の旅を過ごした経験から「モラトリアム」という概 念を生み出したとされる。これらの概念は、S.フロイトの「心理=性的発達理論」に社会・歴史的発達観を統合した包括的な「漸成発達論」の中で発表されている。
エリクソンの発達理論全体の紹介
※エリクソンのアイデンティティ・クライシスに関する紹介など多くの関連動画があります。

13. ハンス・アイゼンク[Hans Jurgen Eysenck]
ベルリン生まれの心理学者。「人格心理学」、「行動療法」の基礎研究と臨床研究に従事し、多くの業績を残した。アイゼンクの主な研究は、「パーソナリティ 理論」と「測定」、「知能」、「社会的態度」、「行動遺伝学」、行動療法である。人間の行為は、生物学的要因と社会的要因の双方によって決定されるという 生物社会的な視点が、アイゼンクの考えと研究の方向性の基本となっている。
アイゼンクへのインタビュー
アイゼンクの人種と知能(part1)

14. ウィリアム・ジェームズ[William James]
アメリカの哲学者であり、心理学者。彼は心的現象を、環境に「適応」し、生存を維持するために発動される機能とみなし、心的現象と身体的過程との関係を明 らかにすることを心理学の目的と捉え、「感情」、「情緒」、「欲求」などの問題に取り組んだ。「機能主義心理学」の先達とされる。環境に対する身体的反応 こそが情動体験を引き起こす原因であるとする「ジェームズ=ランゲ説」によってもその名が知られている。
ジェームズの紹介動画

15. デイビッド・マクレランド[David Clarence McClelland]
アメリカの心理学者。主として「動機づけ」の研究に携わり、「主題統覚検査(TAT)」を用いて「達成動機」を測定する方法の開発や、達成動機の「個人差」の規 定要因の解明に貢献した。また、達成動機と社会の経済的繁栄に関する比較文化的考察では、資本主義の発展を、社会の構成員の達成動機の強さから説明 することを試みた。さらに、達成動機を高めるための短期トレーニング・コースの開発や、リーダーの勢力行使に関わる欲求と部下の評価、組織運営の関連性も 論じている。
マクレランドへのインタビュー

16. レイモンド・キャッテル[Raymond Bernard Cattell]
イギリス生まれの性格心理学、計量心理学者。「因子分析」を駆使した。心理学的特性の階層的構造の解明や遺伝性の評価について膨大な研究を行った。因子分 析の理論面では、個人×テスト×状況という三元データを分析すべき事を主張し、二つの元の組み合わせに基づいて技法を分類した事と、因子の回転に関する並 行比例プロフィールの概念が計量心理学のその後の発展に影響を与えた。

17. ジョン・ワトソン[John Broadus Watson]
アメリカの心理学者であり、「行動主義」の提唱者。ラットやサルの研究に従事し、現在の行動生物学にあたる研究を鳥類について行った。その後、子どもや大 人の「学習」について実験的研究を始め、その成果も発表している。ヒトとそれ以外の動物とを同一の地平におき、公共性を持つ客観的データとしての「行動」 を強調した考え方は、アメリカでの心理学の動向に決定的な影響を与えた。

18. クルト・レヴィン[Kurt Lewin]
ドイツ生まれの心理学者。彼は、物理的な環境とは半ば独立した心理学的な存在である「生活空間」の概念を用いて「行動」を理解しようとし、「トポロジー 心理学」と呼ばれる力学的な理論を提起した。この中で、「緊張」、「コンフリクト」、「誘発性」、「要求水準」などの概念についての実験的研究が精力的に行 われ、人格や「動機づけ」研究に大きな影響を与えた。晩年は、自身の理論を社会心理学的な場面へと適用し、「グループ・ダイナミックス」に関する研究 にも力を注いだ。

19. ドナルド・ヘッブ[Donald Olding Hebb]
カナダ生まれの心理学者。生理心理学、特に、「脳」の中であるいは生態の中で現実として起こっている可能性があるもの以外は説明理論として認めないという立 場から、理論的考察を残した。例えば、「行動」に関して、「行動とは公共的に観察可能な筋ないし外分泌腺の活動である」という定義を示したり、「ラシュレー の量作用説」に対して反証を示したりした。今日まで影響を残しているものとして、「記憶」・「学習」のメカニズムとして提出した「ヘッブの可塑性シナプスの 法則」がある。

20. ジョージ・ミラー[George Armitage Miller]
アメリカの心理学者。ハーヴァード大学での講義をもとに、『言語とコミュニケーション』を著した。この研究は、イメージというのは、ある人の「学習」の全体 的な累積であって、「有機体が自分自身とその世界について有するところの、累積され、編成された知識である」という認知的学習理論をもたらした。またミラー は、人間の「記憶」システムに「チャンキング」の考えを導入したことでも知られている。