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20世紀の著名な心理学者100人

61. カール・スペンサ・ラシュレイ[Karl S. Lashley]
アメリカの心理学者。「学習」「記憶」「視覚」の神経機能、その他、後半な研究を進め、「大脳」のメカニズムと記憶の研究の開拓者であった。 代表的な実験を上げると、ネズミに迷路の課題を与え、皮質の部分の、いろいろの場所、様々の大きさの切除を試みた結果、切除の場所は重要では ないが、難しい迷路の場合、切除の大きさは決定的に重要な影響を与える事を見出した。このことから、大脳が等しい潜在能力をもつこと、量が重 要である事(量作用説)を提唱した。

62. ケネス・スペンス[Kenneth W. Spence]
アメリカの「行動主義」心理学者。ハルの「学習」理論とは「動機づけ」の機能について相違するが、ハルのよき伝達者であり、さらに、ハル理論 に沿ってより広い実験的、理論的な貢献をした。たとえば、「弁別学習」の問題についての優れた成果や、ハルの「動因低減説」をさらに発展させ た「誘因動機づけ理論」の提唱などがある。

63. モートン・ドイッチュ[Morton Deutsch]
アメリカの社会心理学者。いかにして、破滅的な葛藤を防ぎ、協力的関係を発展させることができるか、という視点から「協力=競争」に関する研究 を多数行った。「実験ゲーム研究」には、初期の段階から関与し、ゲーム場面での協力=競争行動に個人の社会的動機が深く関与していることを 最初に指摘し、さらにゲーム場面における信用と不信の問題、トラッキング・ゲームを用いた脅しの研究などで、この分野に貢献している。主要な 研究は『紛争解決の心理学』にまとめられている。

64. ジュリアン・ロッター[Julian B. Rotter]
アメリカの心理学者。行動主義や精神分析を離れ、社会的文脈や環境要因の影響を臨床心理学に持ち込み、人は基本的にネガティブな結果を避け、 ポジティブな結果を望んでいると想定し、他者のポジティブな結果を導く行動によって人の行動は支配されているとして「社会的学習理論」を提唱 した。他にも、「統制の所在」の在り処に関する個人の信念を測定する「I-E尺度」の開発、「ロッターの文章完成法(RISB)」などで有名。

65. コンラート・ツァハリアス・ローレンツ[Konrad Zacharias Lorenz]
オーストリアの動物行動学者。動物の行動は、形態的特徴と同様に、それぞれの種に固有に遺伝的に特徴づけられるという事実を出発点に、比較行 動学を確立した。彼が提出した多くの見解のなかでも「攻撃」は最も大きな影響を与えた。彼にとって、攻撃は最も根本的な「本能」であり、時々その 衝動を開放しないと暴発の恐れがあると考えた。したがって、「解発刺激」の無い状態で「生得的解発機構」が働き、種に固有な行動が発言する真空 活動の存在を指摘した。幼児図式は人においても生得的解発機構が存在する例として、ローレンツが指摘したものであり、この研究が人間を対象とし た比較行動学の出発点となっている。

66. ベントン・アンダーウッド[Benton Underwood]
アメリカの実験心理学者。「言語学習」と「記憶」の分野で多くの優れた業績をあげた。「学習」の「転移」や「干渉」などの問題に対しても多くの実験 研究を行ったことで有名。また、研究方法論者としてのキャリアも持ち、1971年の『言語学習と記憶の実験的分析:進化と革新』や学部生向けの 『実験心理学(1949、1966)』などに代表される、実験研究の方法論に関する名著を著した。

67. アルフレッド・アドラー[Alfred Adler]
オーストラリアおよびアメリカの精神医学者、精神分析学者。「個人心理学」の創始者。フロイトは人間の心理や行動を観察する上で、「性欲」を中心 に据えたが、アドラーは人間が「劣等感」を「補償」するために、より強くより完全になろうとする意志があると考え、「権力への意志」とよんで重視した。 アドラーによる治療とは、問題を持つ人の劣等感の要因を理解・把握し適切な目標設定が出来るよう再教育することにほかならない。このような未来 志向的な人間理解を背景に、甘やかされた子、厳しく育てられた子などに対する治療教育も熱心に行った。

68. マイケル・ラター[Michael Rutter]
イギリスの乳幼児精神医学の教授。乳幼児心理学の父と呼ばれる。早期疫学的研究などに加え、「自閉症児」に対するアプローチとして、「DNA研究」 や「ニューロイメージング」などの使用、研究と実践の接続、「剥奪」、家族と学校の影響、遺伝学、「読字障害」、生物学的要因と社会的要因の相互 作用、「ストレス」、疫学的研究と同程度の長さの縦断的研究、病理学上の発達と一般的な発達における不連続面の解明など発達における様々な分 野に多大な貢献をした。

69. アレクサンドル・ロマノヴィッチ・ルリヤ[Alexander R. Luria]
ソビエトの心理学者、かつ医学をおさめた神経心理学者でもあった。発達心理、「学習」の研究を行った。また第二次大戦時における戦時「脳損傷」 症例、多くの局所脳損傷者の詳細な観察に基づき、感覚、運動およびその統合など「脳」機能全体にわたって考察を加えた。その結果、複雑な行為の 遂行には、それぞれが特異的な役割を果たす脳の複数の部位が「機能系」として関与しており、局所的な障害によって特異的な症状が引き起こされる とした。また、神経心理学的検査法を開発し、「リハビリテーション」についても研究実践をおこなった。


70. エレノア・マッコビィ[Eleanor E. Maccoby]
アメリカの心理学者。発達心理学と社会心理学、特に「性差」の研究で知られる。幼児の社会化の過程に関する研究や、乳幼児における社会的行動の 測定に関する方法論の確立などに多大な貢献をした。性差の研究に関しても多くの研究、著書を出版しており、1974年に出版されたジャクリンとの共 著『性差の心理学』で有名。この著書は、1600以上の研究にレビューされた。

71. ロバート・プロミン[Robert Plomin]
アメリカの心理学者。離れて育てられた、年老いた「双生児」や、離れて暮らした双生児の年齢による変化に関する研究など、双生児研究で有名。「行 動遺伝学」でも知られる。彼は、全く同じ家族がなぜ異なる成長の仕方を見せるのか、「共有していない環境」に原因を求めた。それに加え、彼は多く の環境要因が遺伝子に影響を持つことを示し、遺伝的要因は環境変数と発達的結果の連合を媒介しうるとした。

72.5. スタンレー・ホール[G. Stanley Hall]
アメリカの心理学者。APAの初代会長。科学的な心理学の設立に貢献した。児童、青年、老年を対象といた「エイジング」の研究、特に青年期を対象と した研究を行った。また、宗教に対して心理学的分析を行ったことでも知られ、多くの新しい領域を開拓し、アメリカにおける応用心理学の興隆に寄与 した。フロイトをアメリカに呼び、精神分析の考え方を広めるなど、心理学教育にも多大な貢献をしている。

72.5. ルイス・マディソン・ターマン[Lewis M. Terman]
アメリカの心理学者。スタンフォード大学教授として多年「知能」測定の研究に従事し、定評のあるスタンフォード=ビネー改訂知能検査を作成したこと で有名。このほか、知能「優秀児」を対象に大規模な追跡的研究を行ったことや、「知能指数」の考えを実用化した事でも名を知られている。また、第一 次大戦中の米軍兵士の選抜・配置のための集団式適性検査「アーミーαテスト(言語式)」及び「アーミーβテスト(非言語式)」の開発に寄与した。

74.5. エレノア・J. ギブソン[Eleanor J. Gibson]
の立場にたち、全ての情報は感覚入力に含まれており、そこから知覚を成立させる情報の抽出の仕方に「学習」や「発達」が寄与すると考えた。またJ.J. ギブソンの提唱した「アフォーダンス」の理論を、乳児の知覚発達のレベルで実証しようと精力的な研究を行った。そのほか、「奥行き知覚」の成立に関 する「視覚的断崖」を用いた研究や、「読み」の心理学的研究で広く知られる。

74.5. ポール・ミール[Paul E. Meehl]
アメリカの心理学者。彼はポパーの「反証主義」を支持し、科学理論の評価に「統計的帰無仮説検定」を使用する事を強く批判した。特に臨床、カウンセ リング、社会、性格心理学といった“Scientifically soft”な心理学の分野の多くが帰無仮説検定によって進展が遅れている部分があると考え、臨床的予 測と統計的予測の対立に対処した。他にも「MMPI」のK尺度の発展に寄与し、「バーナム効果」などを提唱したことでも知られる。

76. レオナルド・バーコウィッツ[Leonard Berkowitz]
アメリカの心理学者。人間の「攻撃」で最もよく知られる。攻撃行動の「認知的新連合理論」から始まり、「欲求不満―攻撃仮説」を修正。彼は、怒りなど の不快な情動状態には、攻撃への動機が含まれると仮定し、そこに攻撃的な意味を帯びた手がかりが与えられると、攻撃行動が促進されるとし、「攻撃 手がかり論」を提唱した。他にも、「社会的責任性の規範」が個人に取り入れられることによって、「援助行動」が生じると説明している。

77. ウィリアム・エスティス[William K. Estes]
アメリカの学習心理学者。内部状態を基底とするマルコフ連鎖による推移を学習過程として捉えた「学習」の数理モデル(刺激抽出理論)や、「カテゴリー化」 の数理モデル(事例モデル)で有名である。また、スキナーとともに「条件性情動反応」を発見した。このオペラント遂行反応の抑制率が条件性情動反応量の指 標となり、のちの情動条件づけの研究に広く用いられた。

78. エリオット・アロンソン[Eliot Aronson]
アメリカの心理学者。「ジグソー法」と呼ばれる異人種間の「敵意」や「偏見」を低減させるための介入法で有名。また、「認知的不協和」を洗練させ、人は 「認知的一貫性」を求めて「合理化」する動物であると述べたことや、個人間の「魅力」を「獲得―損失原理」で説明したこと、『ザ・ソーシャル・アニマル』 といった優れた社会心理学の教科書を著したことなどでも知られる。

79. アーヴィング・ジャニス[Irving L. Janis]
アメリカの心理学者。集団が意思決定をする際に生じるシステマティックなエラーを記述し、「集団思考」の理論として提唱したことで有名。初期にはホヴ ランドやケリーなどとともに参加したイェール研究計画において「スリーパー効果」などを含む「態度変容」研究に従事した。その後は、ダイエットや喫煙 といった分野における「意思決定」研究も行い、人々が「脅威」に対してどのように反応するのかを記述している。

80. リチャード・ラザルス[Richard S. Lazarus]
アメリカの心理学者。人を対象とした心理社会的ストレス研究の第一人者。人が「ストレス」を経験する際には、ストレス刺激の有害さと重大さの見積もり (一次評価)と、自分がストレスに際して用いることが出来る能力や資源についての見通し(二次評価)が重要であるとする「認知的評価理論」を展開した。また、 ストレス状況における「コーピング」の効果などの研究も広く行った。「コーピング尺度」を作成した。近年では「情動」全般へと研究対象を広げている。